サンゴの島に少女の記憶を探してワラビー(後編)


元気出して、うるま市 編

 前回からの続きです。

 

 うるま市の勝連城跡にやって来たワラビーと、ワラビー担当いきものがかり・榮門琴音(沖縄タイムス編集局学芸部記者)。榮門の思い出話から、勝連半島のどこかに隠したというタイムカプセルを探すことになった―。

 「ワラビーがかくすとしたら、こんな岩のすき間です!いまこそ目ヂカラを発きする時がきた…」 ロマンが眠る勝連城跡の石灰岩の城壁を前に、眠たげな目をきょろきょろさせる有袋類。 

 「確かに隠すとしたら、こういうとこだけど…」 榮門も岩と岩の間へ目をこらす。

 

 探しながらも、景色にみとれるワラビー。 

 「ホウ…それにしても、ぜっ景です!…ヤッホーだよ!」 山じゃないんだから。

 ワラ「……ヤッホーだよ!ヤッホーだよ!ヤッホーだよ!」 セルフサービスかよ

 

 階段を昇り始めた有袋類。「高いところからだったら、探しやすいかも!」

 ―だが、すぐばてた。「ハア、ハア…あつい…きつい…」

 追う榮門も足取りは重そうだ。「ワラビーあんまり遠くに行かないで」

 

 最高地点へ到達。心地いい風が吹く。「気もちいい!」

 

 眼下には本島から浜比嘉島、平安座島、宮城島、伊計島をつなぐ海中道路が見える。

 「ことねせんぱい、あの橋は?」

 「海中道路ね。全長5キロ弱。ドライブコースとして人気が高いよ」

 「ワラビーのトサカがうずうずします!あの橋に宝ものがある予かんがする…!」

 「それが私のタイムカプセルかもしれないってこと?じゃあ行ってみる?」

 「ハイ!」

 

 ―というわけで、海中道路にやって来た。

 

 「海です!あいかわらず、広くて大きい!」

 「ねえワラビー、やっぱ見つからないよ。まさしく砂浜の中から一粒の砂を探すようなものじゃないかな」

 「ことねせんぱい、あきらめたら、そこでノーサイドです!」

 「なんでラグビー限定?」

 「とりあえず、さがします!」 張り切る有袋類。

 

 ―ビーチではジェットスキーなど、思い思いにマリンスポーツを楽しむ人たちがいた。

 「わあー」

 探し物はどこへやら。いつの間にか顔を出していた太陽を受けてきらめく水面に目を奪われ、ゆっくり護岸に腰掛けるワラビー。

 「…夏です!」

 

 一方、こちらは真面目に探し物をする榮門。どうやら徐々に「過去の自分」に会いたくなってきたようだ。

 「ワラビーも探してくれているし、子どもの予感って、ばかにできない所があるから…」

 …その子ども自身は背後で油を売っている。ふびんないきものがかり。

 

 その後、ようやくワラビーが探し物を始めてしばらくして―。

 「ことねせんぱい、見つけました!」

 「え、ほんと?」 ワラビーに駆け寄る榮門。

 「お宝、はっ見です!」そうして誇らしげに手の中を示す有袋類。

 「……赤貝て!関係ないよ!」

 「海で海のものを見つけたよ!まだ開いていないけど、食べれるかな…」

 「………」疲れからか呆れからか、沈黙する榮門。「……まあ、私も見つけたけどね」

 そう言ってワラビーに「お宝」を示した。「これだよ。もちろん未開封」

 「…ハッ!たらこふりかけ!おたがい海のお宝を見つけました!やったね、ことねせんぱい!」 とんだ潮干狩りだな

 

 ー結局、座り込んでしまった1匹と1人。榮門がつぶやいた。

 「…見つからないね、タイムカプセル」 

 「ワラビーの予かんは、まとはずれでした!」

 「もういいよワラビー。私の探し物のためにありがとうね」

 「昔のことねせんぱいが、今のことねせんぱいをはげます所を見たかった…」

 「…うん。おなか空いたでしょう。いなりとチキンを食べに行こう!」

 「ハイ!」

 

 ―そうして、いなりとチキンで有名な丸一食品の前にやって来たワラビーと榮門。

 「いなりとチキン…はじめての組みあわせに、ワクワクが止まらない…」

 「こうね、かぶりつく幸せを味わえるっていうか…」 楽しそうだな。

 「あれ」歩みを止めた榮門。

 「どうしたの?」

 「…閉まってる!」

 「何でですか…」

 「そうか、ごめんワラビー。きょう月曜日は、定休日だった!」

 「…ええー!じゃあ、じゃあ、いなりとチキンは食べれないの?ショックすぎます!」その場にへたり込んでしまったワラビー。

 「丸一難民」となってしまったワラビーと榮門。心と食欲の行き場を失い、途方に暮れてしまった。

 「ごめんねワラビー。なんか今日は踏んだり蹴ったりだね」

 「大じょうぶです!海のお宝、赤貝を見つけたよ!」

 「ふふふ。ふりかけもね」

 「それより…クンクン」鼻を鳴らし始めた有袋類。「あの草むらかな?…クンクン」

 「どうしたの?」

 「あそこから、ことねせんぱいの、においがするよ!」

 「私のにおいって…」

 「ちょっと行ってみよう…」

 植え込みに近づき、なにやらガサゴソと手を動かすワラビー。「ハッ!これは…」

 「ことねせんぱい、ありました!」 植え込みの土の中に、確かにガチャガチャのカプセルのようなものが確認できる。

 「きっと、タイムカプセルです!」

 

 「…ハイ、ことねせんぱい!」カプセルを手渡すワラビー。

 榮門が驚く。「ワラビー!うわ懐かしい、私のタイムカプセル!これマジなやつだよ!すごいね、ありがとう!」

 「おなかがすくと、鼻がきくようになります!」ドヤ顔の有袋類。

 「すごいすごい!丸一の前に埋めるって、どんだけ丸一好きだったの私」興奮する榮門。

 

 「じゃあ、さっそく開けてみるね。何か緊張するね」 慎重にカプセルを開封する榮門。「手紙だ…読んでみるね」

 「むかしのことねせんぱいは、今のことねせんぱいに何を伝えるのか…ドキドキです!」

 そうして榮門は、中から出てきた便せんの文章をゆっくり朗読し始めた。

 「えっと…『みらいのわたしへ』」

 みらいのわたしへ 

 おげんきですか。

 大きくなって、ケーキやさんに

 なっていますか。

 わたしはショートケーキのいちごがすきです。

 おいしいケーキをつくるケーキやさんになりたいです。

 えいもん ことね

 

 「かわいいゆめです!」喜ぶワラビー。「むかしのことねせんぱいも、目のつけどころがさすがです!ワラビーもショートケーキが好きだよ!」

 「何か恥ずかしいねえ」照れる榮門。「今はケーキ屋じゃなくて新聞記者だけどね」

 「どっちもりっぱな仕ごとです!」そこで、ワラビーが気付いた。「あ、お手紙が、もう1枚あるよ!」

 「え、ほんと?」榮門が再び便せんを手に取って、朗読を始めた。「『ケーキやさんになれなかったら』…」

 

 ケーキやさんになれなかったら、

 イナリとチキンになりたいです

 

 (………私って、どんだけ丸一のこと……) とりあえず、貝になってしまった榮門。

 

 「ことねせんぱい、ヒトはどうやったら、イナリやチキンになれるの?」 追い打ちをかける有袋類。

 「ワラビーごめん、今はそっとしておいて」 そう言うのがやっとの榮門であった。

 

 ワラビーのせいでほじくり返された過去。当時の自分に励まされると思いきや、恥をかかされた榮門。とりあえずケーキ作りが上手な新聞記者になればいいじゃない。そんなことを思うワラビーブログスタッフだった―。

 

 ~ワラビーといきものがかり・榮門からメッセージ~

 「うるま市は素敵な景色と人、おいしいグルメがいっぱいです!みんなも魅力を探しに来てね!待ってるよ!」


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