七色の声よ耳に届けってワラビー


ワラビーともだち名鑑 やびくかりん 編

 11月某日、沖縄タイムスのマスコットキャラクター・ワラビーは、編集局社会部主任の宮城一彰と、那覇市泊の路上を歩いていた―。

 「宮城せんぱい、もう小一時かんほどさまよっています!ハア、ハア…あつい」 11月でもまだ残暑が厳しい沖縄に、しょっぱなから疲れた表情の有袋類。

 「まだ駐車場から5分くらいだぞ。どんな体内時計なんだよ」

 「ワラビーの感かくで正かくなのは、はら時計くらいです!」

 「そこを誇るなよ」

 ちなみに、ワラビーブログに登場するたびに独身をいじられる宮城は今春、読者局から編集局へ移動し、沖縄タイムス日曜こども新聞「ワラビー」の担当記者となったのだ。

 オンリーワンよりロンリーワン 編集局社会部主任 宮城一彰

「カズオ・イシグロっぽく、カズ・ミヤギと呼んで下さい」

 さて、一匹と一人がやってきたのは、とある住宅の前。

「宮城せんぱいのかたには安心感がある…いや、安心感しかないにちがいない…」

「都合よく体重を預けるなよ。ほら、着いたぞワラビー」

 すると、ガチャリとドアが開き、小柄でかわいらしい女性が姿を現した。

 「あ、来た!…いらっしゃい!」小鳥のようなチャーミングな声で出迎えてくれる。

 こちらも、女性に気付いたワラビーと宮城。

 「こんにちは、ワラビーだよ!」

 「あ、すいませんやびくさん!お出迎え恐縮です。いや恐縮です」 梨本勝か

 

 玄関先で各自、簡単に自己紹介した。

 「はじめまして、やびくかりんです!わあ、本物のワラビーだ!」

 「タイムス社会部の宮城と申します。今日はお時間ありがとうございます」

 「ワラビーです。小一時かん歩きました」 何の報告だよ。

 

 そこで玄関先の垂れ幕に気付いた有袋類。「声のプロダクション、キャラ沖なわ…声ゆうタレント研究所、と書いてある!声ゆうは、あの、アニメの声ゆうですか…」

 女性が答えた。「そうだよワラビー!私、声のお仕事をさせてもらっています!」

 「すごい、声ゆうさんです!」 驚く有袋類。

 

 

 小さなお友だちから大きなお友だちまで 聞いてね「りんちゃん」ボイス

 全国区で活躍する人気声優 やびくかりん

「ワラビーも、小がおにあこがれます!」

 

 ―さて、1998年7月19日、子どもたちのための新聞として、沖縄で初めて発行された「ワラビー」は、2017年11月12日付で1000号を迎えた。

 

 「子どもも大人も めくるワクワク」をテーマに、親子で楽しめ、コミュニケーションの手段となる新聞を目指して19年と4カ月。みなさまのもとへ「へえー!」や「びっくり!」、「おもしろい!」―を届けてきた。

 

 その子ども新聞「ワラビー」が来年7月に20周年を迎えるのをきっかけに、宮城ら「ワラビー取材班」が立ち上げたカウントダウン企画が「ワラビーともだち名鑑」。節目に向け、かつて紙面に登場した著名人や、ワラビーに関係のある人を訪ねるというものだ。

 

 その「ともだち名鑑」の記念すべき第1回目を飾るのがやびくかりんさん。2011年当時の沖縄タイムスのCMでワラビーの「声」を担当したことがあるのだ。

  

 

 さっそく、宮城によるやびくさんのインタビューが始まった。

 まずはやびくさんがワラビーを演じた当時を振り返った。「声の仕事がしたい」と現事務所に所属し、2つ目か3つ目の仕事だったという。「本当に光栄でした。県民の誰もが知っているキャラクターを演じるのは不思議な感じでしたね」

 宮城が問う。「ワラビーを演じるに当たって気をつけたことは」

 「まず、タイムスの人にワラビーの性別を聞いたんです。そしたら『性別はない』と言われて、衝撃でした。どうしようってなって」

  どうしたら印象に残るのか―。声をかすれ気味に、中性的な、幼い子をイメージしたという。「やびくかりんじゃなくて、ワラビーがしゃべっていると思ってほしかった。その本人の『声』になりたいんです」

 

 2012年に琉球朝日放送(QAB)で放送され、13年には全国放送もされたアニメ「はいたい七葉」のヒロイン3姉妹の末っ子、喜屋武心七(ここな)役を演じ、一気に世間に認知された。

 「私の声を知ってもらえるいいきっかけになった。沖縄から全国放送されるアニメの声優ができるんだって、とてもうれしかったです」とやびくさん。

 

 宮城が話を継いだ。「小さい女の子を演じているイメージがありますね」

 「20代後半までが多いですね。オーディションでは幅広い音域でしゃべれるよう用意していきます。『(声を)あと2歳若くして』と言われたりするので。微妙な調整を瞬発的にできるよう心がけています。あとは、ヒトじゃないものを演じることも多いかも。ゴリラとか、サルも得意です!」 微笑むやびくさん。

 ワラビーが口をはさむ。「ヒトじゃないものは、ふつうはしゃべれないので、大変そうです!」 お前が言うな

 宮城が言った。「余談ですけど、アニメのポケットモンスターのピカチュウの声優さん…えっと」

 「大谷育江さん」 やびくさんが補足した。

 「…って方なんですか。主人公の声は放映される国によって違うけど、ピカチュウはどの国でもあの『ピカチュウ!』らしいですね。人間じゃないものの声のほうが国境を越えて受け入れられるかもしれませんね」

 「よりギャランティーももらえそう!」 いきなり現実的になったやびくかりん。

 

 「最後に、ワラビー紙面ということで、子どもたちにメッセージをもらえますか」宮城がお願いした。

 「はい。ワラビーを読んでいる子どもたちの年齢なら、まだ何でもできる、何にでもなれる時期。あきらめたり、言い訳とかはせず、やりたいことがあればすぐにやってほしいですね」とエールを送るやびくさん。

 「ローカル(地方)だからってめげないでほしい。沖縄にいながらも全国的な仕事はできる。私、『ローカルの星』になります!」と力強く宣言した。

 

 インタビューは終わり、写真撮影へ―。

 宮城がバシャバシャシャッターを切る。

 「いいですね、やびくさん!わしづかんでる!わしづかんでるなあ!」 独特かよ

 ワラビーが傍らで見守る。「ウフフ…女の子に、がらにもないことを言う、宮城せんぱいです!」 
 

 ここからはせっかくなので、声優ならではの技術を教えてもらうことに。

 「ナレーションの仕事もあるので、アクセントの位置は大事。『アクセント辞典』も持ち歩いています」とやびくさん。

 「アクセント…?」

 「言葉で強調する部分ね。『ワラビー』なら最初の『ワ』を強調するアタマ型。こっちの『ラビー』が正しいね」ホワイトボードで示すやびくさん。

 「記号で書くとよく分かります!タイムスの社いんでワラビーの『ワ』を強ちょうしてない人は、お説きょうが必ようです!」 「ワ」をもって社内の「和」を乱す有袋類。

 

 「ほかには…ゴルフクラブの『クラブ』なら後ろがフラットになる平板型、学校のクラブ活動の『クラブ』ならアタマ型で…」

 宮城が尋ねた。「カズ・ミヤギが飲みに行く、大人の男性が好きなクラブはどっちですかね?」

 やびく「あはは…」 カズ・ミヤギお前

 

 「ねえねえカズ・ミヤギせんぱい!大人が行くクラブってなに?どこ?」

 「…………(やらかしたー)」 無言の宮城。

 

 そしてマイクワークも教わった。スタジオでは出演者が何十人もいる中で、マイクが3~4本しかないことが多い。自分のせりふをひと言発したらすぐに、次のせりふを言う人のためにマイクの前を空けなくてはならない。そのためマイクの前を行き来する足さばきが重要だという。

 「これがマイクだとしますね」

 実践してくれるやびくさん。「こういう風に台本を持って、体は傾けて、自分のせりふを言うと…『シンブンハ、ジンブン(知恵)ニカワル』!」

 すぐにその場から後退した。「ぱっと離れる。そして宮城さんがマイクの前へ。この繰り返しです」

 「カッコいい!」「おおー」感嘆するワラビーと宮城。

 

 「ワラビーもやります!」張り切る有袋類。「シンブンハ、ジンブンニカワル!」

 せりふを言うとすぐに、その場から後退。「…ハッ!ひとりでやっても

つまらない…」 そりゃそうだ。

 

 これにて取材日程は終了。やびくさんが表まで見送ってくれた。

 「ワラビーまたね。私もワラビーのようにずっと幼い、性別不明のキャラクターになりたいな」

 「やびくさんの声はいろんな作品としてずっとのこります!きっと、ワラビーや子どもたちがあこがれる、沖なわの星になるよ!」

 「ありがとうワラビー」

 

 それは、去り際の一瞬の出来事だった―。

 

 「またね!」安全確認せずに、車道に出るワラビー。

 そこへ、迫りくるワゴン車。銀色の車体が猛スピードでワラビーに近づいてくる。

 

 やびくさんが注意を促す。「ワラビー、車が来るよ!危ない!」

 「キャッ!」突然のピンチに足がすくみ、固まってしまった有袋類。「うごけません!」

 

 すると、やびくさんが大きなボリューム、するどい声でワラビーに叫んだ。「ワラビー、マイクワークシンブンハ!」

 「ハッ!ジンブンニカワル!」ワラビーの足が反射的に動いた。とっさに体をひねるように後退。あわやの所でワゴン車は走り去った。

 

 力が抜け、その場に座り込んでしまった有袋類。ワゴン車の怒声のよう、長いクラクションが追って聞こえてくる。

 「ワラビーだいじょうぶ?」有袋類に駆け寄るやびくさん。

 「大じょうぶです!ハア、ハア…声の力でたすかったよ!やびくさん、ありがとう!」

 「もう、心配したよ。気をつけて!」

 「マイクワーク、やっててよかったです!」喜ぶワラビー。

 「そうだね、教えててよかったよ、マイクワーク!」喜ぶやびくさん。

 

 声の力は人を元気にして、様々なピンチを救う。きっと今日も誰かが誰かの声に救われているのかも。そんなことを感じたワラビーと、ワラビーブログスタッフであった―。

 

 ~ワラビーよりお知らせ~

 カズ・ミヤギせんぱいのやびくかりんさんのインタビュー記事は11月19日付の子ども新聞「ワラビー」で読めます!ブログにはないエピソードもあるので、大人も子どもも見てみてね!

 やびくかりんさんのプロフィールや声はキャラOKINAWAさんのホームページでチェックできます!

 やびくさんは今年発売予定のゲーム「魔神少女エピソード3」で「ジズー」の声を担当するほか、11月25、26日に那覇市の若狭公民館で開かれる「第4回こども国際映画祭in沖縄(KIFFO)」の上映作品「タングカッター」でも主人公の吹き替えをしているよ!

 沖縄テレビの番組「HYゴーゴーゴーヤー」でもメインナレーションを務めているのでぜんぶ聴いてみて下さい!

 やびくさん、本紙取材に加え、ブログ撮影へのご協力、ありがとうございました!沖縄の星になってね!


  1. ヒロコ より:

    新聞とブログの連動企画ってステキですね!わくわくします。

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