書評『沖縄を語る 1』
保革を超えた真実の声
言葉には心に響くものとそうでないものの2種類がある。本書に収められた沖縄を代表する各界20人の証言は、読む者の心に深く染み入って、ときに沈思黙考させ、ときに涙させる。
本書は沖縄タイムスに掲載された同名の連載企画をまとめたものである。新聞紙面の1面と2面を大きく割いて、各界の重要人物の生の声をインタビュー形式で載せ、それを伝え残そうとしたのが、本企画である。多くの読者が待ち望んだ1冊であり、これが単行本として県内はもちろんのこと、日本全国に広がっていくことを、強く願いたい。
本書に登場する人々は、現沖縄県知事の翁長雄志氏をはじめ、沖縄の政治、経済、社会、文化、教育、芸能、スポーツの各分野で活躍するキーマンたちである。本書を読むと、保守とか革新とかいう政治的言説を超えて、沖縄の厳しい現実の中で生きてきた人たちの真実の声を発見できる。苦悩と葛藤をくぐり抜けてきた彼ら、彼女らの言(こと)の葉(は)は、強くてしっかりとしている。
本書には、政治的に保守といわれてきた人たちも多数登場する。しかしその人たちも含めて、本書に登場する人々は、普天間基地の県内移設や基地の過重負担に対して反対の姿勢を示している。各人その理由は異なっても、そこには沖縄戦からアメリカ統治を経て現在に至る、70年にわたる沖縄の歴史そのものが横たわっている。
人の生きざまは、単なる経歴からはみえてこない。その生い立ちから分岐となった出来事まで含めて、その人の生きてきた歩みそのものが、その人のいまの行動や決断を形づくる。本書はそうした人間の奥深きところまで分け入って、その人の思いや行動の源泉を紡(つむ)ぎだしている。
日本復帰前後に生まれた評者とほぼ同じ世代の13人の記者による熱意と誠意あるインタビューが、これら戦後を生き抜いてきた20人の語り手たちの心と共振して、本書は生まれたといえよう。
その意味では、この共振こそが「次代への伝言」そのものである。(平良好利・法政大学非常勤講師)
7月16日掲載
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