ITの波にライドオンだワラビー
ITの波にライドオンだワラビー
ある日の昼下がりの編集局。経営企画室主任、小林剛の厳しい声がフロアに響き渡っている。
「いいかワラビー。広報担当たるもの、着信力と発信力がないといけない。あらゆるものを着信し、最適なものを選りすぐって発信するんだ。そう、携帯でいう『バリ3(バリバリ3本)』になるんだ『バリ3』に!」
「でもワラビーも、トサカはいつもバリ3ですけど…」
小林は興味がないもの、そう、まるで一度聞いた話を違う飲み会でまたしゃべる上司を見たような目をした。
「とにかくワラビーは、いずれ自分でブログを書いて『発信する側』に立たないと。そのためにはまず、パソコンの扱いをきっちり覚えないとな!以上!」。言い残して小林は去った。
「小林せんぱい、きびしい…」。パソコンなど扱ったこともないワラビーは早くも途方に暮れる。
ちょうどその時、ワラビーのふかふかの耳に飛び込んできたのは聞き覚えのあるバリトンボイス。
「はい、はい、健康保険証を使って安心得得、ご自宅で受けられるマッサージですね」
モニターに出た文字を何のてらいもなくそのまま読み上げる男
編集局学芸部主任 村井 規儀 (いきものがかり)
「村井せんぱい!」
「わ、どうしたのワラビー?」
「ワラビーにパソコンを教えてください!」
「そういうのは…」。自分でスキルアップしていくものなんだよ、と言いかけて、村井は思わず口をつぐんだ。なぜなら、目の前の地味に大きな生き物が、やたら小さく見えたような気がしたからだ。
「…僕が教えてあげるよ!まずは『検索』を覚えればいいよワラビー」
「けんさく?だれですか?」
「そう、同級生に1人はいそうな感じだけど違うよワラビー。ネットには日常や仕事に役立ついろんな情報が詰まっている。作家の石田衣良さんも作中で言ってるんだ。『生きることは探し求めることで、よい人生とは、よい検索だ』。ワラビーは好奇心旺盛だから、きっと検索は楽しいよ」
「けんさくの弟はけんじ、ですかね…」
「家系図はこの際いいよ、ワラビー。まずは…そう、グーグルで『タイムス』を検索してごらん」
ワラビーはおっかなびっくり、キーボードをたたきだす。「こうですか」
村井「ワラビーこれ、明らかに名古屋名物だよね。…『テンムス』て!『タイムス』って打つの!」
ワラビー「もう一どやってみます」
ワラビーは再びキーボードをカタカタ打ち出した。「できました」
ワラビー「だってうまく打てないんです…」
いかんせん前足のふっくら感がハンパないため、なかなか打ちたい文字をモニターへ表示させることができないワラビー。ついに頭を抱え込んでしまった。
「もうだめです!」
「ワラビー、なにか困ってるの?」
「あ、里子せんぱい!」
ワラビーに声を掛けてきたのはデジタル局専属の記者、里子。「沖縄のネイルサロン、東京に次いでなぜ最多?」など、若い女性目線の記事には定評がある。
さらに、里子はとんがりコーンの正しい食べ方を実践する点でも社内で定評があった。
「じつはキーボードがうまくうてなくて…」言いかけた時、ワラビーの頭の中に何かが灯る感覚があった。
そう、ワラビーはひらめいたのだ。「里子せんぱい!ワラビーに、そのとんがりコーンをください!」
「いいけど…おなか空いてるの?」里子はワラビーの広げた両手にとんがりコーンを流し込んだ。
「ありがとうございます!」
「よく分からないけど頑張ってね、ワラビー」
「はい!」
…カタカタ。
…カタカタカタ。
しばらくすると、心地よい打鍵音がフロアに響いてきた。
「村井せんぱい、キーがうてます!」
「ホントだ!すごいぞワラビー!ブラインドタッチに劣るとも勝らない、おきて破りのとんがりタッチだ!」
「じゃあワラビー、何でもいいから検索してみなよ」村井が促す。
「わかりました!」ワラビーは勇んでモニターへ向かった。カタカタ。カタカタカタカタ。「…けんさくしました!」
「ていうかグーグルで友だち探しちゃダメだよワラビー!検索ってそういうことじゃない!」
「だめですか…」
「友だちはいっぱい外に出て、いっぱい会った人の中から自然にできるんだよワラビー」
「わかりました。ワラビーはそとへでます!」
…何はともあれ、ワラビーのチャレンジは続くのである。
~おまけ~
村井「an・anの特集かよ!」
ワラビー「これもだめですか…」
ワラビーかわいい!
夏休みのイベントあればおしえてください。
いろんなイベントでたくさんの友だちに会えた夏でした!
あの中にこはねちゃんがいたのかな。
ワラビーはこれから思いだしわらいします!