恐竜の「画力(えぢから)」ってすごいぞワラビー
恐竜の「画力(えぢから)」ってすごいぞワラビー
夏休みの始まりを告げるように、一段とまぶしい日差しが街をぎらぎらと照らしている。
7月19日、広報担当ワラビーといきものがかり・村井規儀は豊見城市の豊崎地区に来ていた。
「ワラビー、今日はワラビーブログ初の社外ロケだよ。気合を入れなきゃね」
「そんなことより村井せんぱい、ワラビー、きのうの晩ごはんが思い出せないんです。何たべたっけ…」
「『そんなことより』とか言うな!ちゃんと仕事しなきゃダメ!行くよ!」
相変わらず緊張感がない一匹と一人が訪れたのは「豊崎ライフスタイルセンターTOMITON」。二足歩行の恐竜がリアルな動きを見せる「ディノアライブ~超・恐竜体験」(沖縄タイムス主催)がこの日、開幕したのだ。
ワラビー「ワラビーより大きい4メートルの恐りゅうがほえたり、かみついたりするってききました。…なんだかこわい」
村井「怖くて当然だよワラビー。『恐竜』の語源はギリシア語の『恐ろしいとかげ(deinos sauros)』だからね。日本語だと、ダイノサウルスとか、ダイナソーとか言ったり…」
ワラビー「恐りゅうは百きんですか?」
村井「違うし、きっと百円ショップの会計ほど明朗な存在じゃないよワラビー」
「…つきました!」
「夏休み初日の子どもたちもいっぱいいるね、ワラビー」
「ハイ!」
ワラビーと村井が会場に入ると、子どもたちにどっと取り囲まれた。
「ワラビー!」「ワラビーこっち向いて!」「目がぼくの頭と同じ大きさ!」
(なかなかどうして人気じゃないか。やっぱ外に出てよかっただろうワラビー?)
村井は小さくつぶやいた。
会場内では、開演を待ちきれない子どもたちの、恐竜を呼ぶ声が響いている。「きょうりゅうさーん!」「でてきてきょうりゅうさーん!」
そんな平和なひとときを、物々しいサイレンの音が破った。
「緊急警報!緊急警報!恐竜が興奮状態にあります!落ち着くまでそのままお待ちください!」
一瞬で静まり返る会場内。
「ワラビー、きちんとレポートしなきゃ!」村井がげきを飛ばす。
その時。
「みーんなー!こーんにーちはー!」
さっきの警報何だったの的なテンションで、ミカお姉さんが登場した。
ミカお姉さんは、恐竜についての豆知識コーナーやクイズなどをテンポよく進行していく。
ブラキオサウルス(首)も登場。
「草しょく恐りゅうには、仲まいしきをかんじます!」調子に乗るワラビー。
…だが、真打ちはここからだ。
空気を切り裂くようなほえ声がひとつ、会場に響いた。
すかさず、ミカお姉さんがアナウンスする。「はいみなさーん!恐竜がおとなしくなりましたので、これから登場しまーす!元気がないと、食べられちゃうぞー!」
何げに怖いミカお姉さん。アナウンスは続く。「恐竜は暴れん坊なので、かみついてくるかもしれません!だけど、甘噛みなので危害を加えることはありませーん!」
「に、さん、ご、なな、じゅういち…」
恐怖を頭から追い払おうと、なぜか素数をカウントし始めるワラビー。
そして、ラプトゥル登場。姿を現したと思いきや、お約束的に暴れ出した。
…悲鳴を上げ、逃げ惑う子どもたち。
そして、いつの間にか、ぴったりと寄り添っているワラビーといきものがかり。
「村井せんぱい!ワラビーはにげだしたいです!」
「悪夢の中で何か怖いものに追われていて、『こっち来るな!』って感じを思い出すね!」
…人類を甘噛みしながら会場を所狭しと暴れまわるラプトゥル。やがて、その視界に「何か大きな生き物」を認めた。
自らを飼育している「ヒト」とは違う匂い。ラプトゥルはその「大きな生き物」に興味を持った。
頭頂からしっぽの先まで全長4メートルの巨体を軽く左右動させながら、ラプトゥルはゆっくり「大きな生き物」に近づいていく。
「む、村井せんぱい!」
「なんだいワラビー」
「のんきに写しんをチェックしてる場あいじゃないですよ!恐りゅうがきますよ!」
「そんな、さっき向こう側で暴れていたんだから、すぐに来るわけないよワラビー…ってホントだー!!」
「ワラビー、お先にどうぞ」
「お先にペロリ、的な…?」
「たべられちゃうってこと!?いやです!」
一匹と一人との距離を、徐々に詰めてくるラプトゥル。すでに荒い呼吸音さえ聞こえるようだ。
「…村井せんぱい、こんなときになんですけど!」
「きのうの晩ごはん、おもい出しました!ポークたまごでした!」
「こんな時すぎるよ!」
「そうです!こんなときだから…こんなときだから、村井せんぱいは、ワラビーがまもるんだ!」
ワラビーは村井をかばうようにして、ラプトゥルに向き合った。「ペロリとさせないからな!」
「ワラビー、最後の会話が『ポークたまご』っておい!」
ラプトゥルは容赦なくワラビーに襲い掛かった。
ワラビーは観念した様子で手を下げる。「村井せんぱい、いまのうちに、にげて!」
なぜかうれしそうにカメラを構える村井。
「あっ」
ワラビーはラプトゥルの最初の一撃で態勢を崩し、その場にへたりこんだ。
(もうだめです!)ワラビーには立ち上がる気力もない。
だがそこで、ラプトゥルの目の色がわずかに変化した。何かを確認するようにワラビーの背後へ回り込んでいく。
(に、さん、ご、なな、じゅういち……えっ!)
ワラビーはそこで確かに、ラプトゥルの「声」を聞いたような気がした。
(オマエモ…シッポガ…アルジャナイカ…)
ラプトゥルはワラビーのしっぽを確かめるようにしばらく眺めると、そのまま何もせず、去ってしまった。
…ディノアライブが阿鼻叫喚のうちに終わり、会場には落ち込む一匹と一人が取り残された。
「何か、かばってもらったのに、笑顔で写真バシャバシャ撮ったりしてごめんよワラビー」
「そこじゃないんです村井せんぱい。ワラビーは恐りゅうじゃなくてワラビーなのに…」
ワラビーといきものがかりのチャレンジは続くのである。
~おまけ~
恐竜の怖さにめちゃくちゃ泣きじゃくりながらも、ワラビーと握手してくれた女の子がいたよ!
ワラビー「きっと、つよい子にそだちます!」
~ワラビーからお知らせ~
ディノアライブは8月31日までTOMITONでやってます!
平日は午前11時~午後5時40分までの6回、土日祝日は午前11時~午後6時までの8回です!
料金は高校生以上1,000円、4歳~中学生は600円だよ!
お問い合わせはタイムス文化事業局 098-860-3587です。家族やお友だちで遊びに来てね!