「青いやつ」を陣中見舞いしたんだワラビー
「青いやつ」を陣中見舞いしたんだワラビー
沖縄の大動脈、国道58号に面したビルのそばで、格調高そうな社旗がたなびいているー。 -7月17日午後2時55分。沖縄タイムスの新人広報ワラビーは同ビルのエントランスで、ワラビー担当いきものがかり・村井規儀の到着を待っていた。
「村井せんぱい、まだかな…」
ややあって、ワラビーに駆け寄る人影が。
「ごめんごめんワラビー、待った?」
「あ、里子せんぱい!」
登場したのはデジタル担当記者、里子。しかし、その顔つきは険しい。
「…それにしてもワラビー、何考えてるの?沖縄タイムス関係者なら、まず来ないビルだよ!」
「でもワラビーは、最しょにあいさつしたいと思ったんです…」
里子はふう、と一つため息をついた。「まあいいよ。サッと行って、サッとからんで、サッと帰るよ」。里子から「サッと子」に改名しそうな剣幕だ。
ワラビーの顔に不安の色が浮かんだ。「あれ、村井せんぱいはこないんですか?」
「そう。本来『いきものがかり』としてワラビーに同行すべき村井さんは、こんな大事な時に出張中。だから今回の表敬訪問も欠席。代わりに私が来たの」
ワラビー「えっ、欠せきってつまり、こんなかんじですか…」
里子は面倒臭そうにうなずく。「そうそう、そんな感じよ。ほら行くよ、ワラビー!」
「ハイ!」ワラビーは慌ててついて行きながら、出張先の村井に思いをはせる。(見まもっててくださいね…)
勘のいい方はすでにお気づきだろうが、ワラビーと里子が訪れたのは那覇市天久の琉球新報社。 沖縄の二大県紙の一つとしてタイムスとシェアを二分し、日々、しのぎを削る存在だ。
ことしで誕生16年目を迎えたワラビー。県内ゆるキャラ界でも先駆けだったが、これまでその存在感をいまいち発揮できずにいた。一方、後発ながらフットワークの軽さやコミカルな動き、ブログなどの情報発信量により、ワラビーを鮮やかに超えていったゆるキャラがいた。
ワラビーを「ワラビー先輩」と慕いつつ、「先輩、ブログの更新止まってますよ頑張って」と多少の皮肉も忘れない。外交の基本「右手で握手、左手にナイフ」のような存在。それが琉球新報マスコットキャラクター、「青いやつ」りゅうちゃんである。
7月1日の辞令交付式で広報担当に就任し、ブログも始めたワラビー。ぜひともりゅうちゃんに陣中見舞いしたいと、考えられる限り最高のアウェーに乗り込む決意を固めたのだった。
いよいよ、琉球新報ロビーに一歩足を踏み入れるワラビーと里子。
「画すうがおおい会しゃ名ですね…」
「うちはカタカナだしねー」
第一声がそれでいいのか。
「ここは入れさせんぞ!お引き取り願おう!」
「わ、わ、やめてください!」
「耳、堅いね」
「鼻も堅いね」
新報社のみなさんになごやかな歓迎を受けた。
「ハードなくせして、しなやかなんです…」 何を言ってるんだワラビー。
ともあれ、この日の目的はりゅうちゃんとの対面。さっそく受付で呼び出してもらう。
ワラビー「りゅうちゃんをおねがいします!」
里子「ワラビー!トラベルチャンスみたいな雰囲気出さないで!」
受付の女性「少々お待ちください。ただいま下りて参ります」
邂逅(かいこう)の時が刻々と迫る。
~5分後~
「ワラビー先輩、久しぶりだりゅう!今日はわざわざありゅがとう!」
「あっ!りゅうちゃん久しぶり!…あれ、りゅう…ちゃん…なの?」
一同「…微妙に違うー!」
りゅうちゃん「みなさんいやですりゅう。ワラビー先輩に会うために、アポイントの照会があったおとといから不眠不休でこの表情をつくったんですりゅう~☆」
里子「その割にほおの血色いいし!」
ともあれ、琉球新報社で久しぶりの対面を果たした1匹と1人。お互いどう接していいかわからず、「ボクシング・カンガルーVSやんちゃな8歳の男の子」的なじゃれあいに発展してしまった。
慌てて里子が止めに入る。「ワラビー、今日は何しに来たの?お中元を渡しにきたんでしょう?」
「ハッ!すいません…」われに返るワラビー。「りゅうちゃんこれ、つまらないものですが…ワラビーが選んだわらびもちです」
「ありゅがとう!大好物ですりゅう~☆」
さっそく包装紙を開けたりゅうちゃん。「りゅりゅりゅ!ワラビー先輩、このわらびもち、1個足りゅないりゅう!」
「ワラビーが味みしておいたよ!」
「ホントに詰まってないものをもらったりゅう!『スカスカおせち』か!」鋭いツッコミを放つりゅうちゃん。
りゅうちゃん「懐柔の匂いも感じりゅけど、ありゅがとう!」
そこで、何やら赤いグッズを取り出したワラビー。「りゅうちゃんの日ごろの活やくがあまりにもまぶしいから、きょうはりゅうちゃんをじっくり見るために、こんなものを作ってきたんだ!」
里子がすかさず言う。「太陽を見る下敷きじゃんそれ!」
「何ですりゅう~☆」
下敷きをのぞいたワラビーは思わずはっとした。
(あれれ…りゅうちゃんのかお色が…むらさきいろに!)
ワラビー「りゅうちゃん、顔いろがわるいけど、大じょうぶ…?」
りゅうちゃん「最近ビー…麦茶の飲みすぎで寝不足なんだりゅう~☆」
その後、琉球新報のみなさんの企画で、ワラビーとりゅうちゃんは4番勝負を行うことに。
…この対決の模様は、りゅうちゃん日記をご覧ください!
ロケスタッフが変な汗をかきまくった陣中見舞いも無事終わり、ワラビーとりゅうちゃんはお互いの健闘をたたえ合った。
「りゅうちゃんありがとう、楽しかった!」
「こちらこそ!ワラビー先輩もまぶしいりゅう!」
1匹と1人は新聞業界と県内ゆるキャラ業界をさらに盛り上げていくことを、ともに誓って別れるのだった。
りゅうちゃん「それじゃ、表まで送りゅます!」
ワラビー「ありがとう、りゅうちゃん!」
(りゅうちゃん、きょうはありがとう。なんていうか、やっぱり青かったね…)
地球を見たガガーリンのような感想を残し、ワラビーは胸いっぱいでタイムスへ戻ったのだった。
~数日後~
…タイムスビル11階編集局。記者が一人、写真を見ながらつぶやいている。
「ワラビーのやつ…僕が出張中にそんなおいしいロケをするなんてずるいぞ」
やがて、村井はどこかしら違和感を覚え、写真をめくる手を止めた。
「このお見送り、横から見るとドラクエみたいなんだけど!」
ワラビーといきものがかりの冒険は続くのである。
【動画:メイキング・オブ・りゅうちゃんに会いに行く】
~御礼~
りゅうちゃん&琉球新報のみなさま、寛大なご対応、本当にありがとうございました!「りゅうちゃん日記」も楽しみにしています! ―ワラビー&ワラビーブログスタッフ一同