アイネ・クライネ・那覇のムジークだワラビー
アイネ・クライネ・那覇のムジークだワラビー
8月21日、ワラビーといきものがかり・村井規儀は那覇市立銘苅(めかる)小学校にやって来た。夏空の下、どこからか弦楽器の音色がゆったりと聞こえてくる。
なぜかきょろきょろし始めたワラビー。「…村井せんぱい、メカのはずなのに巨だいロボが見つかりません」
「メカじゃなくて銘苅だよワラビー。今日は24日に初の定期演奏会を控えた、那覇ジュニアオーケストラを激励するんだ。すでにその大きな耳に合奏が聞こえているだろう?」
「ジュニアオーケストラですか!」
昨年10月に結成された那覇ジュニアオケは、小学1年生から高校2年生まで、子どもたち約40人で編成される。 バイオリンなど弦楽器を触ったこともない子も含め、今回の定期演奏会開催を目標に約1年間、練習を重ねてきた。演奏会の指揮を務めるのは琉球フィルハーモニックチェンバーオーケストラ“イオ”の後藤正樹さん。譜面や、後藤さんのタクトを見つめる子どもたちのまなざしは、真剣そのものだ。
「やあワラビー、村井さん、よく来たね」
校内では“イオ”の代表理事、上原正弘さんがワラビーと村井を出迎えてくれた。
「こんにちは上原さん!ワラビーの好きなオケはカラオケです!」何を言い出したんだワラビー。
「好きな合戦はオケ狭間。いきものがかり・村井です!」お前もだ村井。
ワラビーが上原さんに質問する。
「子どもたちだけのオーケストラなんですか?」
「そう。バイオリン歴6年の子もいれば、まったく初めての子もいたんだ。楽譜もオリジナルを使っている子がいれば、易しく書き直したものを使っている子もいる。音をそろえるために、全員で自覚を持って、お互いのレベルの差を補いながら演奏するのが大事なんだよ」
「音をそろえるために、みんながみんなのことを考えるんですね!すてきです!」
ここで上原さんから、ありがたい提案が。「ワラビーもバイオリンを弾いてみる?」
「ハイ!」
オケの子どもたちがワラビーにバイオリンの持ち方を教えてくれる。
「ワラビー、ちゃんとあごにはさむんだよ」
「弓の上げ下げや、指の位置を覚えるのが難しいんだ。上げ下げがみんなと違うととっても目立つからね」と上原さん。
おっかなびっくり、弓を上下させるワラビー。 ♪♫♪♪♪~。 驚くことに、ワラビーのバイオリンからはそこそこきれいな音色が飛び出した。「…ひけた!」
「すごいワラビー!」子どもたちから歓声が上がる。
隣で見守っていた村井も思わず目を丸くした。「やるじゃんワラビー、『神童』モーツァルトか、はたまた『楽聖』ベートーヴェンか…」
ワラビーも誇らしげにつぶやく。「がくせいさんは、金がない…」何だそれは。
「ワラビー、楽器が上達するには、1にも2にも練習だからね」上原さんからありがたい助言をもらった。
続いてワラビーと村井は、すこし上級の子どもたちの練習会場にお邪魔した。
今回の演奏会では、軽快でアップテンポなモーツァルト「ディヴェルティメント」K.136から第1楽章、勇壮で心おどるようなエルガー「威風堂々」第1番などが披露される。オケは順調に仕上がってきているようだ。バイオリン。ヴィオラ。チェロ。練習会場には息の合ったアンサンブルが響いている。
オケを率いる「コンサートマスター」は山本理菜さん(石嶺小6年)。「オーケストラにはいろんな楽器があるので、メロディーが生き生きとしている。聴いている人が楽しい気分になるようなコンサートにしたい」。表情にも気合が入る。
そんな中、ワラビーは指揮者の後藤さんにあいさつ。「後とうさん、こんにちは!…あのね、ワラビーも、しきしゃをやりたい!」
「ちょっとワラビー、何を言い出したのさ?」慌てる村井。
「…え、それって、ジュニアオケを振りたいってこと?」苦笑いする後藤さん。
「ハイ!」元気よく答えるワラビー。
カンガルー科にタクトが振れるのかよー。子どもたちにも戸惑いが広がる。
だが、後藤さんはこころよく承諾した。「分かった。やってみようかワラビー」
「きほんを教えてください…」
「うん。指揮者はとにかく、演奏者にエネルギーとパワーを与えることが大事だよ。ひとりひとりが出す『音』をよく聞くんだ」ていねいに説明する後藤さん。
「わかりました!エネルギーとパワーですね!」
…そんなこんなでワラビーが振る「威風堂々」がスタート。(CDなど音源をお持ちの方はこのタイミングで再生して下さい)
ワラ「たのしいです!」
一見、うまく振れているかに思えたワラビー。しかし、かたわらで見守っていた村井は気づいてしまったー。
そして、ついに後藤さんからもストップがかかった。「そろそろやめようか、ワラビー(練習にならないし)」
「…えー!?」 そりゃそうだ。
おとなしく後方で練習を見学することにしたワラビーだが、音楽の楽しさに触れた今、オケに参加したい意欲がむくむくとわき上がってくる。
「村井せんぱい、ワラビーもこの、トライアングルで一しょに演そうしたい!」
「…ハッ、村井せんぱいの目が三角になってます!」
「トライアングルだけにね…ってなんだよこのノリツッコミ!」
「じゃあこのリコーダーをふきます!」 ♪ピ、ピ、ピ、ピーヒョロ~(ワ・ワ・ワ・ワラビー)♪
「やめなよワラビー!みんな演奏してるんだから!」
しかし、ワラビーは止まらない。♪ピピピッピ、ピーヒョロ~(歌って、ワラビー)♪
「やめなって!」村井がたしなめる。
するとどうだろう。ジュニアオケの子どもたちが演奏をやめ、次々とワラビーのもとへ集まってきたではないか。「ワラビー!」「もっと聞かせて!」
♪ピピピッピ、ピーヒョロ~♪
…練習会場を出て行った。ワラビーの笛の音が、次第に遠ざかっていったー。
~ワラビーからお知らせ~
那覇ジュニアオーケストラ第1回定期公演は、8月24日(日)、那覇市民会館で午後2時開演(午後1時半開場)です!全席自由700円。3歳未満は無料だよ!みんなで鑑賞に来てね!
また、ジュニアオケは現在、弦楽器のメンバーで活動していますが、今秋には管楽器のメンバー募集も予定しています。問い合わせは琉球フィル事務局まで!
~さらにワラビーから豆知識~
ハーメルンの笛吹き男:13世紀のドイツ、ハーメルンの街で130人の子どもが一晩で消えてしまった史実に基づいた伝説。ハーメルンの街に現れた笛吹き男は住民を悩ませていた大量のネズミを笛の音で操り、川でおぼれさせて退治した。しかし、住民が約束の報酬を支払わなかったことに腹を立てた笛吹き男は、今度は130人の子どもたちを笛の音で操り、街から連れ去ってしまった。
~さらにさらにワラビーからつぶやき~