隅に置けない奥の島々だったのさワラビー(後編)
隅に置けない奥の島々だったのさワラビー(後編)
前回からの続きです。
「おくなわ」フェアに参加する渡名喜、粟国、南大東、北大東、多良間の5島のブースを回り、ワラビーとワラビー担当いきものがかり・村井規儀も一段落。
「さて、僕は午後に取材を控えてるから、そろそろ引き上げるよワラビー。後は一人で大丈夫だよね?」
「ハイ!村井せんぱい、おつかれさまです!」
村井は足早に去っていった。
一人になったワラビーは、2階ギャラリーを訪れた。「そういえば、2かいはまだ行ってない…」
「あっ、たらぴんです!」駆け寄るワラビー。
「お…く…な…れ…」たらぴんはたどたどしくチラシの文字を読んでいる。字を読む練習をしているようだ。
「ちがうよ。それは『おくなわ』だよ。さいごの文字は『れ』じゃなくて、ワラビーの『わ』って読むんだよ!」 アドバイスするワラビー。
「そうか、『おくなわらびーのわ』だメェ~」 そうじゃないぞ、たらぴん。「あっ、ワラビーだメェ~」
「一しょに2かいを回ろう!ワラビーは2かいにくわしいよ!」 限定かよ。
「うん、うれしいメェ~!」
2階ギャラリーは各島の観光や移住をPRするブースが並ぶほか、過去の写真も展示。
また、高校がないため中学卒業と同時に親元を離れざるをえない子どもたちの別れや成長、家族の苦悩をつづり、反響を呼んだ本紙連載「十五の春」関連の展示もある。
「いろんなしまの、みりょくがわかるメェ~」
「あっ」移動中にバランスを崩すたらぴん。生後3カ月。まだ足元がおぼつかないのか。
「たまにコロコロころがっちゃうメェ~!」
「たらぴんコロリです!」 ピンピンコロリみたいに言っちゃったよ。
「つぎは1かいに、いきたいメェ~!」
「わかった。つれて行くね!あぶないから、ワラビーと手をつなごう!サトウキビも、もっててあげる!」 珍しく年長者ぶりを発揮するワラビー。
再び1階に着いた有袋類と子ヤギ。「1かいは、2かいの次にくわしいよ!」 そこで、ワラビーに興味を示す子どもが。
だが、子どもと触れ合ったワラビーが振り返ると、そこにいるはずのたらぴんの姿は消えていた。「たらぴん……?」
(どうして?手をはなしていたのは、少しの間です!)気が焦るワラビー。
(生まれたばかりなのに…ワラビーが住むこんな大とかいで…心ぱいです!) 心配の中に、微妙に自慢が混ざるワラビー。
そこへ通りかかったアニーちゃん。ワラビーが息を切らしながら駆け寄った。
「なに?運動不足なのワラビー?あと、近寄らないでって言ったよね?」
「たらぴんが、1人でいなくなったよ!ワラビーは心ぱいです!」
「えっ!それは大変!…あたしも探す。タイムスビルの中は任せて」 非常時にてきぱき動いてくれる、頼もしいアニーちゃん。
「ハイ!」
―かくしてアニーちゃんとワラビーによる、たらぴんの捜索が始まった。
「たらぴん!あたしが遊んであげるから、出ておいで!」
「ワラビーとキックベースボールしよう!」 なんでまた。
その時。飲食ブースを探すワラビーの目に、見覚えがある物が飛び込んできた。
さらにそこは、やぎ(ピンダ)汁、やぎ(ピンダ)そばを提供する多良間島のNPO法人ふしゃふぬネットのブース。
女性店員がワラビーに声を掛ける。「こんにちはワラビー、おいしい多良間のピンダ汁食べる?ハイどうぞ」
ワラビーは湯気を立てるやぎ汁を抱え、悲しい顔でその場に崩れ落ちた。
「たらぴんが!…たらぴんが、やぎ汁になっちゃった!」 まさか。
ピュアで人なつこい、たらぴんとの短かった思い出を勝手にたどりながら、空を見上げるワラビー。
さらに、少し離れた所で、ワラビーの様子を見ていたアニーちゃん。
(ワラビーがやぎ汁を持って、さみしそーにうずくまっているんだけど。…まさか。まさかたらぴん、そーいうことになっちゃったの?)
「ワラビー、あたしも一緒に、たらぴんのこと思い出させて」
「ハイ!」
何とそこで、たらぴんが普通に帰ってきた。
「えっ」「えっ」思わず顔を見合わせるワラビーとアニーちゃん。
ワラビーがたらぴんに飛びついた。「たらぴん!ワラビーは、やぎ汁になったと思って、心ぱいしたよ!」
大きな目をぱちくりさせるたらぴん。「ボクはさんぽをしていただけだメェ~!くもじ川ぞいに、うメェ~草がいっぱいあったメェ~!」 リアルに道草を食っていたたらぴん。
「とりあえず、よかったです!」はしゃぐワラビー。
その様子を、遠巻きに見守るアニーちゃん。「…よかったね、ワラビー」
そして、ワラビーと「粟国の塩対応」アニーちゃんは―。
「ワラビー」アニーちゃんが両手を差し出す。「握手しよう」
ぽつり、ぽつりと話すアニーちゃん。「あたし人みしりだし、すぐ『村井せんぱい!』『小林せんぱい!』言ってるワラビーが正直、なよなよって見えてさ。条件の厳しい離島で頑張ってる粟国島の人たちと、比べてたんだよね」
「そうですか…」
「でも、ワラビー今日は頑張ってたじゃん。それに、やっぱあれだね、動物が好きな人に悪い人はいないね!」
一匹と一人は、「きずな」がつながるように、両手でがっちり握手する。
「ハイ!アニーちゃん、しおももらってよかった!ワラビーは、しおのよさを知りました!これからも沖なわのために、がんばろう?」
「うん!がんばろーねワラビー!」 アニーちゃんはにっこりほほ笑む。
厳密に言うと「動物が好きな動物」だぞアニーちゃん。それはさておき、「おくなわ」5島の発展と島の人の幸せを願うワラビーであった―。
「おくなわ」フェアはあす15日(日)が最終日!午前10時から午後6時まで、タイムスビルでやってます!
午前10時からはタイムスホールで、県内の大学生でつくる団体「学生+」と、離島出身中高生が「自立・自律」や進学について一生懸命語り合います!
大勢の来場、お待ちしています!
アニーちゃんや、たらぴんの活躍をはじめ、粟国・渡名喜・南大東・北大東・多良間の5島の魅力を随時発信しているおくなわプロジェクト推進協議会HPからは、各島のフェイスブックへ飛べます!こちらもチェックしてみてね!
※ワラビーブログで紹介した商品のうち、14日終了時点ですでに完売した商品もありますので、ご了承ください。