資本主義の大海も浅瀬からなんだワラビー(後編)
新生ワラビーグッズ開発スタート 編
前回からの続きです。
タイムス経営企画室主任の小林剛はワラビーを連れて、編集局デザイン部の才媛(えん)、具志堅恵にワラビーグッズのデザインを依頼することにした。ワラビー不在でも、具志堅の首を縦に振らせる自信はある。だが、交渉を有利に運ぶには多対一。小林には、そんな思惑もある。
「ハイ!…でも小林せんぱい、マッチぼうパズルがとけないままだと、気もちわるいです」
「この際どうでもいいだろ」
「でも…」
問題:マッチ棒5本で作った「夫」にマッチ棒2本を足して「女」にせよ。
小林はマッチ棒をしばらくにらむ。「ふむ」。数秒。そうして右手を伸ばす。「分かった」。
「えっ」
2本のマッチ棒を迷いなく配置する小林。「できた。行くぞワラビー」
「えっ!すごいです!…でも、ワラビーが解きたかった!」悔しがる有袋類。
11階編集局にやってきた小林とワラビー。
「小林せんぱい、おいしい話って何ですか?おかしまたはタンパクしつ…」
「腹はふくれないぞ。そろそろ新しいワラビーグッズを開発・展開する時期じゃないかと思ってな(ゴルフコンペの景品に使えないし)」
「ワラビーグッズ?やった!…ついにワラビードーナツが世に出る時が来た…」自己愛にあふれる動物である。
「揚げ菓子はないぞ。食品は賞味期限の管理がややこしいしな」
「ワラビーはこんなにアゲアゲなのに?」 言いたいだけだろ。
「気分だけな。とりあえず目指すはデザイン部だ」
「分かりました!じゃあもう一人…」
「…めったにないトリオです!」うれしそうなワラビー。
仕事中に付き合わされたワラビー担当いきものがかり・村井。「ちょっとワラビー、いい加減にしなよ」
「何ですか村井せんぱい?」
「僕は今日、メガネっ子なんだから」 だから何だ。
そんなこんなで、1匹と2人でわいわい、デザイン部・具志堅のもとへやってきた。
「恵せんぱい、ワラビーだよ!」
「知ってるけど…」
小林「ワラビー、『ワラビーだよ!』からの…?」
ワラ「…ワラビーグッズをデザインして下さい!」はいつくばる有袋類。
村井「ジャパニーズ・ビジネスマンの精神見たー!!」 …何だそれ。
そこで具志堅が、おずおずと口を開く。「ワラビー、土下座とかやめてよ。ほら立って」
「え?」
「あの剛さん、前編から言い掛けてるんですけど、新しいワラビーグッズ、1つはできてます」 前編って何だ。
「何だって!」 思わずモニターをのぞき込む1匹と2人。
具志堅がモニターを示す。「これです。クリアファイル。読者局が管理している既存デザイン分の在庫が少なくなったということで、更新依頼があって作ったんです。確かもう納品もされているはずですよ」
村井が続く。「ほら剛さん。部局、部局で『縦割り』なんだから。どこでもあると思うけど」
そんな事はお構いなしなナルシスト・ワラビー。「とってもかわいいです!ワラビーが5種るいもいる…!」
小林は確信していた。キュートでキャッチー。この後輩のデザインは売れる。あとは、いかに売り出し、いかに展開するかだ。
指示を出す小林。「メグミ、この路線でいろんなグッズを考えておいてくれ」
水を差すワラビー。「とりあえずグッズ完せいを祝って、ファンタでかんぱいです!」
小林は「ワラビーグッズ開発への道」に一歩足を踏み出したことを感じていた。そう、具志堅という才能、ワラビーというにぎやかし、村井というメガネっ子を伴って―。
まずはタイムスのネット通販サイト、ギャラリーショップで売り出してみるか。きっと、今後のワラビーグッズの販売ニーズを占う観測気球になるだろう。グッズが売れたら、ワラビーもより多くの人に認知され、愛されるのではないか。小林は静かに心を決めた。「忙しくなるかもな…」
「かわいいとは思うが、…売れるのか?」12階経企室。室長の銘苅達夫がクリアファイルを手に、疑問を呈した。「いくらだ?」
小林が答える。「タイムスギャラリーショップでは5枚セットで500円。税込540円で売ろうかと」
「そうか。僕なら迷った末に買わないかな。タダならもらうけど」
「タダて。でも室長、デザインは社内の女性を中心に好評です。このデザインを軸に、今後のグッズ展開も考えています」
「小林」銘苅が重々しい声で指摘した。「若手の挑戦は歓迎するぞ。だが慎重にな。うちは新聞社だ。良くも悪くも先達が整備した宅配制度に甘え、商売のノウハウに乏しい。『新聞以外売ったことがない』くらいに考えとけ」
「…分かりました」
「ワラビー、ちょっと外、出るか」
「ハイ!」
夕暮れ時。涼やかな風が一人と一匹のほほを優しくなでていく。
「グッズ販売…」小林が口を開く。「少し、燃えてきたな」
「もえてきた…小林せんぱい、ハイ!」
「バカ、そういう意味じゃない!」 突っこみながら苦笑いする小林。
かくしてワラビーグッズの開発が、ここに始まったのであるー。
~ワラビーとおなじみのメンバーからCM~
従来からデザインを一新させた新生ワラビーグッズ第1弾「クリアファイルセット」はタイムスギャラリーショップで本日27日から販売開始です!(※ギャラリーショップ→オリジナルグッズ・注目グッズ販売)
5種類のセット販売のみで、価格は税込み540円。デザイン担当の恵せんぱいは「ワラビーのふちどりを無くすことで、やわらかい印象に仕上げました」とアピールしてます。勉強や仕事の合間にふと手にとって、なごめること間違いなしです!
タイムスの女性向けWEBマガジン「W」編集長の里子せんぱいは、ギャル雑誌「小悪魔ageha」の切り抜きをはさむのに重宝しています!「かわいさが足し算じゃなくて、掛け算になるファイルかな」
村井せんぱいは完成を知り、これまで持ってたファイルを宙に放りました。あっ!極端なせんぱいです!
クリアファイルの意味はないけど、機密書類を入れても安心。真っ黒な「8ビット」ワラビーファイルがお気に入りです。「個人的には善でも悪でもない、グレーがいいけどな」
学生なら教科ごとに使ったり、社会人ならプロジェクト別に使ったり、5人で1セットを買ってキャラクター別に使ったりと、楽しみ方は、あなたしだいです!よかったら買って下さいね。よろしくお願いします!
さらに、ワラビーグッズ第2弾、第3弾も開発中です。みなさんの「こんなグッズがほしい」というご希望やアイデアも、待ってます!
迷った末に買わない
…そうかも…。
新聞以外売ったことない、かっこいいですね。それでいいのです、新聞社なのだから。
針男さん、ひさしぶりです!コメントありがとう!
まよったすえに買わない…そうですか…なんどもまよってみるのも、ありだと思います!
ワラビーはがんばってクリアファイルを売ります!
ここまで書いて、小林せんぱいに「お前が売っているのは油だけだろ」って言われました…。