心もざわわと揺らすパフォーマンスさワラビー(前編)


 第21回おきでんシュガーホール新人演奏会 編

 梅雨入りした沖縄はこの日22日も曇り空。那覇市久茂地のタイムスビル12階では、陰うつなグレーな空に対抗するように、白黒つける娯楽に打ち込むワラビーの姿があったー。DSC_0278

 「ひとりオセロで7勝7敗。…勝ち負けが決まりません!」 ふびんな動物だな

 「ワラビー、懐かしい遊びをやってるじゃないか」 声を掛けてきたのはワラビー直属の上司、経営企画室主任の小林剛だ。

 「あっ、小林せんぱい!ワラビーとオセろう?」DSC_0318

 「何だその動詞は。言っとくけど、おれは強いからな」

 「負けません!」DSC_0331

 「ワラビー、どっち取る?」

 「ワラビーは白でたたかいます!」

 「そうか、じゃあおれは黒だな」 小林はゆっくりと着席した。

 

 (10分後)

 小林の指先が駒を裏返す。パチリ。DSC_0311

 「ほら、これで終わりだワラビー」 

 「……黒一色にそまりました!」 完敗かよDSC_0296

 ゆうゆうと去る小林。「じゃあなワラビー。いつでも挑戦してきな」

 「くやしい!」DSC_0336

 しばらくその場で落ち込んでいたワラビー。やがて同じフロアにワラビー担当いきものがかり・村井規儀(編集局学芸部主任)の姿を見つけた。

 「村井せんぱいです!ワラビーとオセろう!?」 流行りかDSC_0673

 「ああワラビー。相手をしてあげたいけど、僕はいま急いでるんだ。ここ12階の役員室で表敬訪問の取材があるんだよ」

 「だれが来たの?」

 「これからのクラシック界をになう若き才能たちだよ。第21回おきでんシュガーホール新人演奏会に出場する音楽家3人が来社したんだ」 村井はチラシを手に説明した。DSC_0676

 「ほほう、若き才のう…ワラビーもよく『やればできる子』と言われます!」

 「そんなこと言う前にまずやってみなよ。僕は『不言実行』が好きだな」 ごもっとも。

 「あと、あと、シュガーホールには『おかしの家』のような甘いひびきがあります!ねえ村井せんぱい、ワラビーも…」

 「連れてかないよ!…ていうか、そういういつものペースに付き合っている暇はないんだよワラビー。今度遊んであげるから。じゃあ」DSC_0668

 村井も足早に去って行き、取り残されるワラビー。「ヒマです!」

 

 ところ変わって役員室には、3月のオーディションで入賞した演奏家3人が訪れていた。DSC_0245

  演奏会は南城市沖縄電力、沖縄タイムス社の3者主催で毎年開かれ、優れた音楽家の発掘や、地域の音楽文化振興、国際交流の推進を目指している。

 1994年、同市佐敷に音楽専用のシュガーホールが開館したのを機に始まり、若手クラシック演奏家の登竜門としても知られる。

 ことしは24日(日)午後3時から開催。10人が熱意あふれるパフォーマンスを披露する。入場料は一般2000円、高校生以下1000円だ。

 

 「観客に感動を届ける演奏を目指す」と力を込めるのは、オーディションでグランプリを獲得した、チェロの藤原秀章さん(山梨県出身、東京芸術大学)。他分野の審査員とも音楽を共有できた手応えがあったという。ちなみに姉・晶世さんは昨年度のグランプリ受賞者だ。

藤原さん(左)とシュガーホールの大城盛直館長

藤原さん(左)とシュガーホールの大城盛直館長

 「パリ留学を経た成長を地元・沖縄の人へ見てもらいたい」とピアノの宮永霞さん(宜野湾市、パリ地方国立音楽院修了)。リラックスしたムードで場をなごませた。

 「沖縄のみなさんに私の歌で感動を届けたい」と話すのはソプラノの北園あかねさん(兵庫県出身、県立芸術大学大学院修了)。表情にも「歌える喜び」がにじみ出るようだ。

それぞれ笑顔がこぼれる宮永さん(右)と北園さん

それぞれ笑顔がこぼれる宮永さん(右)と北園さん

 

 ひとしきり意気込みを語った後、一同の話題はシュガーホールに。

シュガーホール

シュガーホール

  藤原さんが建物の感想をもらした。「サトウキビの中にあって、白くて…いかにも沖縄、という感じですよね。あれ、自然に生えているわけじゃないですよね。サトウキビ」

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 沖縄タイムス常務取締役、新里正次が引き取る。

新里常務(手前中央)

新里常務(手前中央)

「もちろん農家が植えてますよ。うねを作って、苗を植えて…11月から2月にかけて刈り取って…ちょっと待ってなさい」新里常務は腰を上げて退室したと思いきや、しばらくして戻ってきた。「はい、ちょうど黒糖があった」

 黒糖を配り始めた新里常務。藤原さんらは笑顔で口にする。「おいしい」DSC_0264

 「ほら、宮永さん、北園さんも」カメーカメー攻撃を繰り出す常務。「お茶と合うんだよね」

 そこで宮永さんが口を開いた。DSC_0267

 「私、小さいころ、父に『シュガーホールは砂糖でできている』って言われて、ずっと信じていました」 せんえつながらお父上、発想がワラビーと同じだぞ。

 「でもすてきです!」北園さんが突然、乙女心を受信した。

 そこまで聞いていた村井がたまりかねたように言う。「あのみなさん、たいへん申し上げづらいんですけど、砂糖よりも、音楽の話しませんか?」DSC_0247

 「…ああ」「ホントだ」「そういえばそうですね」「何かすいません」「…すまんな村井」 しゅんとなる大人たち。

 

 ―そんなこんなで役員表敬を終え、若手演奏家一行はタイムスビル1階を目指す。この後にロビーで、本番の演奏会の告知を兼ねたミニ演奏会が開かれるのだ。DSC_0347

 すると一行の前に、あからさまにかまってほしそうな動物が立ちはだかった。DSC_0340

 「…みんなまって!ワラビーもミニ演そう会で、このたてぶえを一しょに演そうします!」DSC_0341

  女性二人は大喜び。「ワラビーって言うの?」「かわいい!」

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 「ワラビーはたてぶえを上手にひけます!ワラビーも去年、タイムスの広ほう担当になったばかりなので、新人のみんなとは、きっと新人の同級生だよ!」 偉そうにDSC_0373

 村井が止めに入る。「ワラビー、みなさんはミニ演奏会を控えているし、ふざけている暇はないんだよ。ほら、その笛をよこしな」DSC_0380

 嫌がる有袋類。「ワラビーも毎日電気を使っているから、おきでんの演そう会に出る資かくはあります!」

 「使ってるだけで電気代払ってないだろ!なにそのクレーマー的発想!」村井が突っこむ。「とにかくこれは、しばらく没収!」

 「あっ!ワラビーのたてぶえ取っちゃダメ!」DSC_0384

 ついには村井に、リコーダーを没収されたワラビーであった―。

 「心もざわわと揺らすパフォーマンスさワラビー(後編)」へ続きます!

 

 ~ワラビーからお知らせ~

 「第21回おきでんシュガーホール新人演奏会」は24日(日)の午後3時開演(午後2時半開場)です!事前オーディションで選ばれたグランプリ受賞者の藤原さん、両優秀賞の北園さん、宮永さんを含む10人の若手音楽家が出演するよ!情熱を感じてください!

 会場はもちろん南城市文化センター・シュガーホール!

 チケットは一般2000円、高校生以下1000円で、販売はシュガーホール、文教ハーモニー那覇店、デパートリウボウ、コープあぷれ、島ピアノ、普久原楽器店などです!

 問い合わせは同ホール、電話098(947)1100までお願いします。

 「みんなで聴きにきてね!」DSC_0614

 ミニ演奏会の行方は?あのオセロって意味あったの?…といろいろ気になるブログ後編はあす23日(土)更新予定です!お楽しみに!


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