心もざわわと揺らすパフォーマンスさワラビー(後編)


第21回おきでんシュガーホール新人演奏会 編

 前回からの続きです。

 那覇市久茂地のタイムスビル1階ロビーでは22日正午、第21回おきでんシュガーホール新人演奏会(24日)に出場した新人音楽家3人によるミニ演奏会が開かれようとしていた。DSC_0398

 演奏会参加はかなわなかったものの、とりあえず1階に降りてきたワラビー。「村井せんぱい、人がどんどんあつまっています!」DSC_0461

 「実力を持ったメンツだからね。ミニ演奏会と言わず、3階のタイムスホールでゆっくり聴きたいくらいだよ」 ワラビーに応じるのはいきものがかり・村井規儀。

 「ホール?ワラビーが好きなケーキはホールケーキ…」

 「質より量かよワラビー」

 

 会場設営に少々時間を取られ、スタートが遅れてしまった。チェロを演奏する藤原秀章さん(東京芸術大学在学)、ソプラノを披露する北園あかねさん(県立芸術大学大学院修了)はそれぞれ、楽器やのどの調整に余念がない。

出番を待つ(右から)藤原さん、北園さん、宮永さん

出番を待つ(右から)藤原さん、北園さん、宮永さん

 

 会場のテンションも高まる中でテンションとは無縁の、手持ちぶさたな有袋類。「ヒマです……ハッ!ワラビーが音楽家のささくれだと、しょう明するものがありました!」 端くれだろDSC_0463

 そこで、何やら取りだしたワラビー。「ワラビーのデビューシングル、『ワ・ワ・ワ・ワラビー』だよ!これを見せたら、演そう会に引っぱりだこです!」DSC_0408DSC_0407

 …顔が微妙に違うぞ

 

 さっそく北園さんと宮永霞さん(ピアノ・パリ地方国立音楽院修了)に見せに行く有袋類。「ほら、ワラビーのCDだよ!プラチナディスクです!」 ふらちな動機のくせに。DSC_0424

 「へえーすごいねワラビー!」感心してあげる北園さん。

 「何だか今と顔違うねー」そこは目をつぶるんだ宮永さん。 

 

 (藤わらさんにも自まんしておこう…)背後から藤原さんに迫るワラビー。DSC_0427

 「藤わらさん、ワラビーのファーストシングルだよ!」 そしてラストシングルだろ

 「ワラビー、CD出してたの」付き合ってくれる藤原さん。「でも、今はごめんね。チェロの調弦しててさ。やっぱ湿気がすごくて…」DSC_0433

 高温多湿な日本の中でもさらに高温多湿な亜熱帯・沖縄。チェリスト泣かせの気候の中でのグランプリ獲得は、やはり実力の高さを感じさせる。

 村井が止めに入った。「ワラビー、そのへんにしときなよ。本番前なんだから…」

 「ハイ…」しょげるワラビー。

 

 

 ワラ「………」DSC_0455

 ワラ「………」DSC_0443

 ワラ「………」DSC_0409

 村井「こらワラビー!アメリカ西海岸風にラジカセ持ってきて、勝手に自分のCD流しちゃダメ!」

 ワラ「…ええー!」DSC_0418

 

 そしてようやく、ミニ演奏会は始まった。3人を壇上へ率いてきたワラビーもひと言。

 「フレッシュな3人とワラビーを、みんなで応えんしてね!」 とんだ便乗だなDSC_0481

 残念ながらタイムスビルにはピアノがないため、宮永さんはあいさつのみの登場となった。

2日後の本番に向け、意気込む宮永さん

2日後の本番に向け、意気込む宮永さん

 演奏会では藤原さんがのびやかなチェロを聴かせた。ランチ時間の耳のごちそう。心地よくも荘厳な空気がロビーに満ちる。DSC_0514

 (ワラビーも演そうしたかった…)ギャラリーの中、グランプリ受賞者の演奏を見つめるワラビー。DSC_0396

 すると、演奏会の司会で、シュガーホールがある南城市の企画部まちづくり推進課・新垣琴子さんがそっと気を利かせてくれた。「ワラビー、演奏会に出たかったんでしょう?タクト(指揮棒)を貸してあげる。振っていいよ」DSC_0644

 「ホント?…やった!ありがとう!」喜ぶ有袋類。DSC_0531

 

 かくして、約9カ月ぶりにタクトを手にしたワラビー。音楽に合わせ、ゆったりと、時に激しく、タクトを振る。DSC_0527

 (音がくは…すてきです!楽しい!)ワラビーの体と心がしなやかなタクトのようにはずむ。DSC_0515

 だが、村井はやはり気づいた。「…相変わらず、指揮者見られてねえ―!」DSC_0534

 

 続く北園さんは「芭蕉布」をソプラノで唄う。空間が広がりを増すよう。生き生きとした表情にも引き込まれる。DSC_0569

 最後は藤原さんと北園さんで「えんどうの花」を披露。DSC_0590

 県民おなじみの楽曲をクラシックの技法で。わずか15分間でも密度が濃い、充実のミニ演奏会は大きな拍手のうちに幕を閉じた。DSC_0602

 

 ―そんな中、ワラビーはピアノの宮永さんのもとへ。

 「宮永さん、ピアノひかないの?」

 「うーん。このビルにピアノがなくって。残念だけどこのやる気は、あさってのバルトークにぶつけるよ」DSC_0618

 「ワラビーもききたかったです……ハッ!あれです!」何かを思いついたワラビー。立ち上がり、その場を離れようとする。「宮永さん、まってて!」

 「え?」戸惑う宮永さん。「どこ行くの?」

 

  ―しばらくして、1階へ戻ってきたワラビー。「宮永さん、ワラビーがピアノをつくってきました!」

 「え?」再び戸惑う宮永さん。DSC_0621

 「白と黒のけっさく…オセロピアノです!」…何だこれ

DSC_0626

 宮永さんはしばらく絶句していたが、やがて口を開いた。「ごめんねワラビー。気もちはうれしいけど…ひけないし音出ないし白黒だからいいってもんじゃないし」

 「…えええー!」謎の創作物を手に、落ち込むワラビー。DSC_0633

 そこで、村井も飛んできた。「どうしました?うちの子が何かやらかしましたか?」DSC_0642

 「あ、大丈夫ですよ村井さん。でもありがとうねワラビー」ワラビーをフォローしてくれる宮永さん。

 「ハイ…ワラビーのエアピアノ…」 「エア」じゃないだろ。

 どうでもいいけどワラビーの目ってオセロみたくない?そんなことを思うワラビーブログスタッフなのであった―。


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