子どももシニアもまじゅん学ばなってワラビー
学習支援センター「まじゅん」開所 編
7月1日。ワラビーは沖縄市知花の住宅街にいた。
セミの声がわんわん聞こえる昼下がり。表通りから入った路地をしばらく歩くと、坂道の途中に比較的大きな建物が見えてきた。
「気もちよく勉強できる場しょって、ここかな…」
「あっ、ワラビーがいます!きっとワラビーのファンのおうちにちがいない…」
柱に飾られていたのは素焼き瓦製のワラビー。自分の存在には目ざとく気づくナルシスティック有袋類。
「緑にもかこまれて、すてきな環きょうです!この家の人さえよければ、ワラビーの別そうにしよう…」 よくないだろ。
ワラビーが訪れたのは沖縄タイムスの販売店、知花販売センター。
店主の知花朝盛さん(61)がこの日、事務所を学習支援センター「まじゅん」として、地域に開放したのだ。
放課後、宿題など家庭学習に取り組む場所として利用できるほか、高齢者と子どもが触れ合う拠点にするという。
「まじゅん」内に足を踏み入れるワラビー。「タイムスの販ばい店でしたか。わあー。広いです!」
店主の知花さんが出迎えてくれた。「やあワラビー、よく来たね」
「知花さん、今日はおめでとう!」
「ねえ知花さん、なんで自分のじむ所を、子どもたちに使わせるの?」
「うん。販売店のお仕事で子どもがいる家庭を訪れる際、親から『仕事で帰宅が遅く、宿題を見るのが大変』という悩みをよく聞いたんだ。子どもたちがここで宿題を済ませて帰れば、家ではゆっくり親子のコミュニケーションの時間が持てると思ったんだよ」
「あとは、地域に話し相手がいないお年寄りがいっぱいいるので、このお年寄りたちと子どもが交流して、いろんな知恵を学べる場をつくりたかったね」
「おばあちゃんの知恵袋を学べます!すごい!」 「袋」が余計な有袋類。
「まじゅん」の利用は無料だが、登録制。子どもは月曜~金曜の午後4~6時、無料で利用できる。知花さんは「上級生が下級生に教え、学び合う場になればいい」と期待する。退職教員らに学習指導のボランティアをお願いする予定もあるという。
また、土曜の午前10~12時は高齢者と子どもが交流する時間としている。
「みんなが気もちよく使うための、『おやくそく』もあります!」
開所式では、地域住民や学校関係者ら約30人が駆け付け、新たな交流拠点の完成を祝った。
知花自治会の宇良敢会長は「子どもたちは未来の宝。『まじゅん』が放課後の居場所となり、すこやかに育つように、地域としても応援したい」と激励。「高齢化社会に向け、先輩方の居場所になることも大事だ」とも話した。
ほかにも美里小学校の新垣孝哉校長や、沖縄市の担当課員ら、関係者が次々と祝辞を述べた。
知花さんは「『まじゅん』では子どもどうし、上級生が下級生に教えながら宿題して、うちの中では家族だんらんをしてほしい」と望む。
なぜかワラビーも勢いづいた。「宿だいは『もちつ、もたれつ、家にもちこませず』です!」 何だそれ。
開所式も終了。せっかくなので持ってきた問題集を解くことにしたワラビー。
「気分をかえて、テーブルで勉強しよう…」座卓から場所を移したワラビー。
「勉強するワラビーを見たら、村井せんぱいと小林せんぱいがほめてくれるはずです!ワラビーを『ハカセ』というあだ名で呼びだすかも!うれしいけど、あだ名としてはイマイチだからことわろう…」
この動物に「杞憂」という言葉を教えてあげたい。
すると、知花さんが様子を見にきてくれた。「ワラビー、大丈夫かい?解けない問題があるの?」
「ハイ!ここです!」
「分かりました!やった!…そうか、知花さんは、こういうふんい気をつくりたいんですね!」
「そうだよワラビー。家に帰ったら宿題を忘れて親子やきょうだいの会話を楽しむ。一緒にテレビを見たり、ゲームをしてもいいよね」
「ワラビーは…」 そこで、ワラビーの表情が暗くなった。「知花さん、ワラビーにはこのところずっと、解けない問だいがあります!」
「なんだい」
それは、問題集に手書きで書かれた言葉。
どうやら、ネオパークオキナワでパルマワラビーと会って以来、仲間を求めるワラビーの気もちは、有袋類だけに袋小路に入ってしまったらしい。
「うーん、これは難しい問題だなワラビー。僕に解けるかな」頭を抱え込む知花さん。
「ワラビーも、仲まや、家ぞくに会いたいです!」その場にへたり込んでしまった有袋類。
「そうか。そうだよな。ワラビーも独りはさびしいよな」知花さんは優しい声を掛けた。「なあワラビー。『まじゅん』の意味を知ってるかい?」
「まじゅん?」
「ウチナーグチで『一緒に』という意味だよ。僕にはワラビーの仲間はどこにいるか分からないよ。でも、ワラビーとまじゅん、考えるよ」
「…まじゅん、考えてくれるの?」ワラビーの顔に光がさす。
「悩むよりまずは、外に出て、歩いたほうがいいよワラビー。足を動かしていたら元気も出る。家の中にいるより、ヒントに出会えるよ。これは販売店主も一緒だけどね」知花さんは笑顔を見せた。「『まじゅん』にもいつでも遊びにおいで。知花の子どもが待っているからね」
「ありがとう…分かりました!ワラビーは、歩きます!」
元気が戻ったワラビー。「まじゅん」という言葉に救われ、再び前を向くのであった―。
知花さん お久しぶりです。子どもたちの居場所づくり 素晴らしいですね。地域支援,子ども支援頑張って下さい。益々のご活躍を祈念しています。
宮ぎさん、コメントありがとう!
知花さんは、知花の子どもたちに「もりじい」と呼ばれていました!
すてきな人だし、みんなに好かれていたみたいだけど、本当はむりに勉強させて、
子どもにはきらわれているのかな…。
ここまで書いて、村井せんぱいに「そりゃ『無理強い』だろワラビー」と言われました…。