多様な命の方舟を見たんだワラビー(後編)
大哺乳類展 編
前回からの続きです。
18日に那覇市おもろまちの県立博物館・美術館で開幕した「大哺乳類展」を訪れたワラビーと、ワラビー担当いきものがかり・村井規儀(編集局学芸部主任)。
会場は肉食動物と草食動物が混在。一般の動物園ではまずお目にかかれない不思議な光景だ。さながら「種のるつぼ」となっている。
「動ぶつにさわっているふうの写しんも撮れます!」 自分も動物のくせに。
ハリネズミなど、針がある動物を集めたコーナーも。
さらに、哺乳類の特徴の一つと言えば体毛。皮ふを保護するほか、毛の色を変化することで周囲の環境に同化したりするのだ。会場には実際に動物の皮ふを触れる展示もある。
「村井せんぱい、シマウマの皮ふはざらざらしています!でも、どうしてこんなに白黒しているんだろう…」
「キツネのモフモフ感には思わず笑みがこぼれるねワラビー」
「ありがとう、君とアリエールです!」 いろんな意味で柔軟な思考の有袋類。
(ワラビーは…マフラーには向いてないな) 何を考えてるんだ村井。
やがて、展示された動物を見ながらワラビーがぽつりとつぶやいた。「みんな、いろんな柄で、いろんな場しょを生きてたんだね…」
「うん。ほ乳類は草原や密林など、生息地に合わせて体毛を変化させていった…いや、よりその地に適した柄の種が生き残ったというべきだろうね。自分の生活の場に適応しなきゃ生き残れない。ほ乳類の生存競争は厳しいね」 村井が応えた。
「村井せんぱい、シマウマも?」
「ウフフ!でも村井せんぱいのシャツも、シマウマ柄です!」
「さわやかなストライプだろ。このおしゃれジャングルをサバイバルしなきゃね」 何言ってんだ。
「でも、あまり肉しょくの動ぶつに見つめられてると、ふるえが来ます!」 その場にへたり込んでしまう草食動物・ワラビー。
「それって本能かよ?ヘビににらまれたカエル的なやつかな。取りあえず、先を急ごうかワラビー」
「ハイ!」
ワラ・村井「すごい!」
ワラ「ゾウにふまれたら、小林せんぱいのメガネなんて一たまりもありません!」
村井「何かにつけ剛さんのメガネ割る例えするよねワラビー」
「キャッ!」
「こらワラビー、危ないだろ寝転がっちゃ」
「村井せんぱい、ワラビーに何かあったら、シマウマさんの実家に連らくして下さい・・・」
「縁起でもないし、ありゃデタラメだしワラビー」
「・・・ええー!」
トビウサギのかわいさにいやされたりしながら―。
ワラ・村井「かわいい!」
ワラ「どことなく、ワラビーににている・・・」
ついに、大哺乳類展も終盤。「有袋類」のコーナーとなった。
「村井せんぱい、このサルの名まえは『クスクス』です!クスクス!」 ベタすぎるギャグを放り込んでくるワラビー。
村井が注意を促した。「そんなことより、ワラビーがいるよワラビー」
「あっ、ホントです!」一瞬、喜びかけたタイムスのワラビーだったが、すぐに顔を曇らせた。「でも、ネオパークで会ったワラビーは、タイムスのワラビーのこと、仲まじゃないって…」
~回想~
(おれたちとあんたは違う種だ)パルマワラビーは吐き捨てた。
「ワラビーは、同じワラビーに会ったことがありません。ねえ、ワラビーはどこから来たと思う?」
(お前のルーツなんて、それこそ知ったこっちゃないな。まあそのうち、どこかの博物館の片隅で、はく製になったご先祖様にでも出会えるんじゃないか)
~回想終わり~
「ワラビーはひとりぼっちと分かりに行っただけでした。・・・つらい思い出です!」頭を抱える有袋類。ワラビーのはく製を見て、「トラウマ」を呼び起こされたようだ。
村井が静かにうなずく。「そうだね。悲しかったよねワラビー」
「思い出したことなのに、まだ悲しいのは、とても悲しい証こにちがいない…」
「・・・ワラビー」
「…・・・・・・・・・・」
「ワラビー」
「ワラビーったら!」
「ハッ!…なんですか村井せんぱい!」
「ハッ!あれは!…ワラビーの!」ワラビーは、言い終わる前に走り出した。
足がもつれ、その場に倒れる。息が荒い。でも、すぐさま立ち上がろうとする。
村井が声を掛けた。「大丈夫かワラビー?」 それに応えず、ただ顔を上げる。体を前へ動かす。
「ワラビーの、ご先ぞさまが、仲まが、いました!」声をからす有袋類。そのまま「ワラビー」へ飛びついた。「やっと会えた!!」
村井が追いついた。「これは・・・これは・・・有袋類?でも確かにうちの、タイムスのワラビーの仲間としか思えないね」
ワラビーは顔を輝かせた。「ワラビーの仲まで、ご先ぞさまにちがいない…!」
「誰がほ乳類展の『有袋類』の並びに、この『ワラビー』を展示したんだろう。疑問だね」
「ワラビーが、物知りな人を連れてきます!」 自分の「ルーツ」のヒントを得ようと、積極的な有袋類。
「頼んだよワラビー」
―3分後。
「アイスティー子さんがいました!」
案の定、戸惑う花笠マハエ。「どうしたの、ワラビーと村井さん?」
村井がフォローする。「いやマハエさん、この展示されている『ワラビー』のルーツについて何か知りませんか?生息していた年代とか、生息していた地方とか…」
「うーん、マハエは沖縄観光親善使節だから、この展示会については詳しくないんだけど♪」マハエは少し考え込み、やがてにっこり笑顔になった。「でも、この動物って、明らかにワラビーの仲間だよね♪そうでしょうワラビー!?」
那覇市久茂地に生息する有袋類・ワラビーは元気よくうなずいた。「ハイ!ありがとう!」
「うれしいことを言ってくれたので、ワラビーのうちわをあげる!」 気前がいいな。
「ありがとうワラビー!はく製かもしれないけど、ワラビーの仲間がいて・・・独りじゃなくてよかったね♪」
「ハイ!」
マハエの漢字は「真南風」。うちわの代わりではないだろうが、ワラビーの心に温かい風を吹き込んでくれた女性であった―。
「・・・結局、経歴はあやふやなままだったけど、ここに別の『個体』があるってことは、どこかに違うワラビーが生きてる可能性もあるねワラビー。良かったね」
「ハイ!ワラビーは勇気がわいてきました!村井せんぱいもありがとう!」
やがてワラビーが口を開いた。「村井せんぱい、沖なわの人がご先ぞさまを前にやることは、決まってます!」
「何を言い出したんだよワラビー!?」
「…ウートートーです!」 旧盆か。
「そりゃ僕ら、先祖崇拝の土地柄だけどさ!仏壇じゃないんだからワラビー!」
「もんくを言わず、おがみます!ウートートーです!」
「分かったよ!…ウートートー!」
「ウートートー!ありがとうご先ぞさま、ワラビーはまたがんばれるよ!」
せっかく「同種」との出会いを果たしたのに、相変わらず「何だこれ」的に締めるコンビであったー。
~ワラビーからお知らせ~
大好評!大哺乳類展は9月6日(日)まで、県立博物館・美術館でやってます!動物たちの迫力ある、そのままの姿に圧倒されに来て下さい!
展示されている「ワラビー」にも会いに来てね!
時間は午前9時~午後6時(入場は、午後5時30分まで)、月曜は休館だよ!
入場料は一般・大学生1,200円、小・中・高校生600円、幼児(3才~小学生未満)400円です!
お問い合わせは同館まで、電話番号098-941-8200だよ!
仲間がいてよかったね、ワラビー!
お姉さんもうれしい気持ちになりました(^_^)
こんど沖縄に行ったらワラビーに会いに沖縄タイムスに寄ってみようかな♪
暑い日が続いていますから、ワラビーも中の人?も気をつけてね!
としちゃんさん、ありがとう!
としちゃんさんがうれしい気もちになって、ワラビーもうれしい気もちになりました!
ワラビーがすむ大と会・くもじにもぜひ来てください!
ワラビーとバランスボーリングしてあそぼう!
ここまで書いて、村井せんぱいに「せっかく沖縄に来たのに、ワラビーの趣味に
付き合わせちゃ悪いだろ」と言われました…。
あと、「中の人はいないけど、神隠しにあう人はいますって答えなよ」と言ってます…。