多様な命の方舟を見たんだワラビー(後編)


 大哺乳類展 編

 前回からの続きです。

 18日に那覇市おもろまちの県立博物館・美術館で開幕した「大哺乳類展」を訪れたワラビーと、ワラビー担当いきものがかり・村井規儀(編集局学芸部主任)。

 会場は肉食動物と草食動物が混在。一般の動物園ではまずお目にかかれない不思議な光景だ。さながら「種のるつぼ」となっている。DSC_0159

 

 「動ぶつにさわっているふうの写しんも撮れます!」 自分も動物のくせにDSC_0166

 

 ハリネズミなど、針がある動物を集めたコーナーも。

 ワラ「とがったやつらです!」 クールな連中みたいに言うな。DSC_0170

 

 さらに、哺乳類の特徴の一つと言えば体毛。皮ふを保護するほか、毛の色を変化することで周囲の環境に同化したりするのだ。会場には実際に動物の皮ふを触れる展示もある。

 「村井せんぱい、シマウマの皮ふはざらざらしています!でも、どうしてこんなに白黒しているんだろう…」

 「きっと実家が葬儀屋なんだろ」 回答が適当すぎるぞ。DSC_0190

 

 「キツネのモフモフ感には思わず笑みがこぼれるねワラビー」

 「ありがとう、君とアリエールです!」 いろんな意味で柔軟な思考の有袋類。DSC_0199

 (ワラビーは…マフラーには向いてないな) 何を考えてるんだ村井。DSC_0203

 

 やがて、展示された動物を見ながらワラビーがぽつりとつぶやいた。「みんな、いろんな柄で、いろんな場しょを生きてたんだね…」

 「うん。ほ乳類は草原や密林など、生息地に合わせて体毛を変化させていった…いや、よりその地に適した柄の種が生き残ったというべきだろうね。自分の生活の場に適応しなきゃ生き残れない。ほ乳類の生存競争は厳しいね」 村井が応えた。DSC_0213

 「村井せんぱい、シマウマも?」

 「・・・葬儀屋業界も厳しいだろうね」 いい加減にしろ。DSC_0218

 「ウフフ!でも村井せんぱいのシャツも、シマウマ柄です!」

 「さわやかなストライプだろ。このおしゃれジャングルをサバイバルしなきゃね」 何言ってんだ

 

よくこんな表情で、というトラのはく製

よくこんな表情で、というトラのはく製

 「でも、あまり肉しょくの動ぶつに見つめられてると、ふるえが来ます!」 その場にへたり込んでしまう草食動物・ワラビー。DSC_0226

「それって本能かよ?ヘビににらまれたカエル的なやつかな。取りあえず、先を急ごうかワラビー」

 「ハイ!」 

 

 その先も、圧巻のアフリカゾウの骨格や―。DSC_0356

 ワラ・村井「すごい!」

 ワラ「ゾウにふまれたら、小林せんぱいのメガネなんて一たまりもありません!」

小林せんぱい(メガネ)

ワラビーの直属の上司 小林剛

  村井「何かにつけ剛さんのメガネ割る例えするよねワラビー」

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 凶暴なクマの群れを「死んだふり」で切り抜け―。DSC_0392

 「キャッ!」

 「こらワラビー、危ないだろ寝転がっちゃ」

 「村井せんぱい、ワラビーに何かあったら、シマウマさんの実家に連らくして下さい・・・」DSC_0405

 「縁起でもないし、ありゃデタラメだしワラビー」

 「・・・ええー!」

 

 トビウサギのかわいさにいやされたりしながら―。

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トビウサギ(小さい)

 ワラ・村井「かわいい!」

 ワラ「どことなく、ワラビーににている・・・」

 村井「『かわいい』って言った後に言うとやらしいだろ」DSC_0451

 

 ついに、大哺乳類展も終盤。「有袋類」のコーナーとなった。

 「村井せんぱい、このサルの名まえは『クスクス』です!クスクス!」 ベタすぎるギャグを放り込んでくるワラビー。DSC_0509

 村井が注意を促した。「そんなことより、ワラビーがいるよワラビー」DSC_0484

 「あっ、ホントです!」一瞬、喜びかけたタイムスのワラビーだったが、すぐに顔を曇らせた。「でも、ネオパークで会ったワラビーは、タイムスのワラビーのこと、仲まじゃないって…」DSC_0477

 

 ~回想~

(おれたちとあんたは違う種だ)パルマワラビーは吐き捨てた。

 「ワラビーは、同じワラビーに会ったことがありません。ねえ、ワラビーはどこから来たと思う?」DSC_2019

 (お前のルーツなんて、それこそ知ったこっちゃないな。まあそのうち、どこかの博物館の片隅で、はく製になったご先祖様にでも出会えるんじゃないか)

 ~回想終わり~

 

 「ワラビーはひとりぼっちと分かりに行っただけでした。・・・つらい思い出です!」頭を抱える有袋類。ワラビーのはく製を見て、「トラウマ」を呼び起こされたようだ。DSC_0500

  村井が静かにうなずく。「そうだね。悲しかったよねワラビー」

 「思い出したことなのに、まだ悲しいのは、とても悲しい証こにちがいない…」

 

 「・・・ワラビー」

 「…・・・・・・・・・・」

 「ワラビー」

 「・・・・・・・・・・・・」DSC_0497

 「ワラビーったら!」

 「ハッ!…なんですか村井せんぱい!」

 立ち上がり、村井のもとへやって来たワラビー。DSC_0524

 「何あれ・・・ていうか、あの動物!?」DSC_0530

ハッ!あれは!…ワラビーの!」ワラビーは、言い終わる前に走り出した。DSC_0528

 「ハア、ハア…」DSC_0546

 「ハア、ハア…あっ!」DSC_0551

 足がもつれ、その場に倒れる。息が荒い。でも、すぐさま立ち上がろうとする。DSC_0555

 村井が声を掛けた。「大丈夫かワラビー?」 それに応えず、ただ顔を上げる。体を前へ動かす。DSC_0559

 

 ワラビーの、ご先ぞさまが、仲まが、いました!」声をからす有袋類。そのまま「ワラビー」へ飛びついた。「やっと会えた!!DSC_0592

 

 村井が追いついた。「これは・・・これは・・・有袋類?でも確かにうちの、タイムスのワラビーの仲間としか思えないね」

 ワラビーは顔を輝かせた。「ワラビーの仲まで、ご先ぞさまにちがいない…!」DSC_0565

 「誰がほ乳類展の『有袋類』の並びに、この『ワラビー』を展示したんだろう。疑問だね」

 「ワラビーが、物知りな人を連れてきます!」 自分の「ルーツ」のヒントを得ようと、積極的な有袋類。

 「頼んだよワラビー」

 

 ―3分後。

 「アイスティー子さんがいました!」

 「何で手当たりしだい連れてきちゃうんだよ!」 ホントだよDSC_0653

 案の定、戸惑う花笠マハエ。「どうしたの、ワラビーと村井さん?」

 村井がフォローする。「いやマハエさん、この展示されている『ワラビー』のルーツについて何か知りませんか?生息していた年代とか、生息していた地方とか…」DSC_0656

 「うーん、マハエは沖縄観光親善使節だから、この展示会については詳しくないんだけど♪」マハエは少し考え込み、やがてにっこり笑顔になった。「でも、この動物って、明らかにワラビーの仲間だよね♪そうでしょうワラビー!?」DSC_0662

 那覇市久茂地に生息する有袋類・ワラビーは元気よくうなずいた。「ハイ!ありがとう!」

 「うれしいことを言ってくれたので、ワラビーのうちわをあげる!」 気前がいいな。DSC_0680

 「ありがとうワラビー!はく製かもしれないけど、ワラビーの仲間がいて・・・独りじゃなくてよかったね♪」

 「ハイ!」

 マハエの漢字は「真南風」。うちわの代わりではないだろうが、ワラビーの心に温かい風を吹き込んでくれた女性であった―。DSC_0666

 

 「・・・結局、経歴はあやふやなままだったけど、ここに別の『個体』があるってことは、どこかに違うワラビーが生きてる可能性もあるねワラビー。良かったね」

 「ハイ!ワラビーは勇気がわいてきました!村井せんぱいもありがとう!」

 そしてかたい握手を交わす一匹と一人。DSC_0575

 やがてワラビーが口を開いた。「村井せんぱい、沖なわの人がご先ぞさまを前にやることは、決まってます!」

 「何を言い出したんだよワラビー!?」

 

 「…ウートートーです!」 旧盆か

 「そりゃ僕ら、先祖崇拝の土地柄だけどさ!仏壇じゃないんだからワラビー!」DSC_0583

 「もんくを言わず、おがみます!ウートートーです!」

 「分かったよ!…ウートートー!」

 「ウートートー!ありがとうご先ぞさま、ワラビーはまたがんばれるよ!」

 せっかく「同種」との出会いを果たしたのに、相変わらず「何だこれ」的に締めるコンビであったー。

 

 ~ワラビーからお知らせ~

 大好評!大哺乳類展は9月6日(日)まで、県立博物館・美術館でやってます!動物たちの迫力ある、そのままの姿に圧倒されに来て下さい!

 展示されている「ワラビー」にも会いに来てね!

 時間は午前9時~午後6時(入場は、午後5時30分まで)、月曜は休館だよ!

 入場料は一般・大学生1,200円、小・中・高校生600円、幼児(3才~小学生未満)400円です!

 お問い合わせは同館まで、電話番号098-941-8200だよ!

 「たくさんの来場を、お待ちしてます!」DSC_0623


  1. としちゃん(神奈川より) より:

    仲間がいてよかったね、ワラビー!

    お姉さんもうれしい気持ちになりました(^_^)

    こんど沖縄に行ったらワラビーに会いに沖縄タイムスに寄ってみようかな♪

    暑い日が続いていますから、ワラビーも中の人?も気をつけてね!

  2. ワラビー より:

    としちゃんさん、ありがとう!
    としちゃんさんがうれしい気もちになって、ワラビーもうれしい気もちになりました!
    ワラビーがすむ大と会・くもじにもぜひ来てください!
    ワラビーとバランスボーリングしてあそぼう!
    ここまで書いて、村井せんぱいに「せっかく沖縄に来たのに、ワラビーの趣味に
    付き合わせちゃ悪いだろ」と言われました…。
    あと、「中の人はいないけど、神隠しにあう人はいますって答えなよ」と言ってます…。

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