君よ真夏の華となるんだワラビー 前編
2015ワラビーまつりin那覇 編
8月9日日曜日。カーニバルの朝ー。
那覇市久茂地のタイムスビル3階、タイムスホール楽屋前。
「いよいよ始まるね、ワラビー」
ワラビー担当いきものがかり・村井規儀が促す。「さあ行くよ」
「ハイ!」後を追う有袋類。
「まつりが始まる…!ワラビーの気もちはエスカレートします!」 下ってるけどな。
―そう、「2015ワラビーまつりin那覇」の開幕である。
オープニングアクトは南城市の太鼓集団「鼓衆龍心(ちぢんしゅう・りゅうしん)」の子どもたちによる創作エイサーだ。
朝からの雨音に負けない元気な太鼓の音が1Fロビーにどんどんと響く。
さらに、女の子は優雅な手踊りで、男の子の勇壮なバチさばきとの対比を楽しませた。
オープニング中に1階へやってきたワラビー。「…ハッ!もう始まっていました!でもたいてい、家が近い人の方がちこくします!」 分かるけどさ。
ともあれ、ワラビーが主役となる沖縄タイムスのファン感謝祭「ワラビーまつりin那覇」が今年もスタートした。親子連れが続々と来場。
「いらっしゃい!ワラビーがすむ、駅チカのタイムスビルにようこそ!」 関係ない情報を放りこんでくる有袋類。
楽しみ方は人それぞれだが、まずはワラビーにふんする「なりきりワラビー」コーナーでワラビーのお面を作り、それをかぶって回るのが「王道」であろう。
すぐに人だかりができたのはバルーンアートのブース。今年も「読者のために」と、那覇市内のタイムス販売店主が手伝ってくれた。途切れない注文に笑顔で応える。作品もすでに「職人芸」の域に達している。
ちびっこ剣士が勝負を挑んできた。「ほらワラビー、打ってきて!」
「ワラビーのけんは、天地むようだよ!」
「天下無双だろ」村井があきれた。「誰がひっくり返すのさ」
1階ではそのほかにも、来場した親子が新聞を使ったパズル、クイズや、
ひらめきと大胆な発想力が要求されるクイズラリー「ワラビークエスト」にそれぞれ挑戦。「頭の体操」を楽しんだ。
オープニングからほどなくして、活気に包まれたタイムスビル。雨で心配された出足だが、昨年を上回る勢いだ。
「村井せんぱい、ワラビーの気もちも、1階にとどまることを知りません!」
「それです!」
「ちょうどこのあと10時半から3階ホールで『ママさん吹奏楽団ビビデバビデブー』の演奏があるよ。そこに行ってみる?」
「ハイ!」
―というわけで、ワラビーといきものがかり・村井が3階ホールを訪れると、さっそく子どもたちに取り囲まれた。
「ワラビーがきた!」「頭でっかい!」
「頭でっかい…初たいめんなのに、グイグイ来すぎです!」落ち込む有袋類。
そうこうしているうちに、ビビデバビデブーのメンバー約20人が準備を整えたようだ。
「沖縄市を中心に活動している、ビビデバビデブーです!プログラムでは『ママさん吹奏楽団』となっていますが、今日はパパさんもいるので、『ファミリー吹奏楽団』です。よろしくお願いします!」
演奏が始まった。この日の演目はオケの名前でもある「ビビデバビデブー」からスタート。
その後にも「ダンダンドゥビズバ」、「森のくまさん、スーザに出会った」など。いずれも心弾ませる楽曲は、誰もが人生の中で一度は魅了されたはず。子どもも大人もともに楽しめるラインナップだ。
「うずうずします…!」 案の定盛り上がって来た、沖縄タイムスの子ども広報。
「楽しい!こうしちゃいられません!」
やがて立ち上がったワラビー。折りしも演目はクライマックス、「夢をかなえてドラえもん」へ。
「ワラビーが、ビビデバビデブーを、ふります!」 バルーンをタクト代わりに、指揮者を始めてしまった。
歌を口ずさむ有袋類。「♪ラララララ、ラララララララ~、ラララララ、ラララララララ~、ドラえもん、ララララララ~♪」
※JASRAC申請する気なし
誰しもがかつて愛した、あの青いネコ型ロボットが頭に浮かぶ。ハーモニーは、会場を一体にしながらクライマックスへ。
「…やっぱり、誰もワラビーの指揮見てねえー!!」 そりゃそうだ。
―ともあれ、演奏は大きな拍手のうちに終了。ワラビーと村井は、ビビデバビデブーの楽屋を訪れた。
「こんにちはみなさん、お疲れさまです!」
「みんな、ワラビーのために、すてきな演そうありがとう!」 上からか。
話を聞いたのは、団長の小波本直武さん。「みんな吹奏楽の経験はあったけど、結婚や出産、子育てでいったん離れてしまったんです」
村井が問う。「でも、吹奏楽はやめられなかったんですか?」
「はい」うなずく小波本さん。「やっぱり、子どもを連れてでもできる吹奏楽団をつくろう、となって。初めは5人で立ち上げたんです」
ワラビーが感心する。「たちあげファイブです!」
「なんで『カッコいい感』出したんだよ!」村井がツッコむ。
小波本さんが続けた。「普通、子どもが吹奏楽の鑑賞に来たら『静かに聴きましょう』じゃないですか。でもビビデバビデブーは子どもたちも一緒に、それこそ歌ってもいい、みんなで楽しめる吹奏楽をモットーにしているんです」
村井がしみじみと同意した。「確かに。音楽は敷居が高いものじゃないし、子どもたちにこそ楽しんでほしい。音『楽』ですもんね」
「そうですね」と小波本さん。
…その間、鼻をホールドされ続けた有袋類。「あの、ワラビーのはなはぬれているよ…」
ビビデバビデブーの楽屋を引き上げたワラビーといきものがかり・村井。
「村井せんぱい、楽しいです!毎日がとくべつで、ワラビーまつりだったらいいのに!」高揚するワラビー。
「竹内まりやかよ。でも良かったねワラビー。会いに行くんじゃなくって、会いに来てくれるって、ぜいたくだよ」
「ホントです!…村井せんぱい、きょうはさいごまで、子どもたちを楽しませよう?」
「もちろん、そのつもりだよワラビー」
「さすがです!」
しかし、村井の「もちろん、そのつもり」は叶わないのであるー。
いきものがかりの身に何が起こる!?「君よ真夏の華となるんだワラビー 中編」に続きます!