君よ真夏の華となるんだワラビー 中編
2015ワラビーまつりin那覇 編
前回からの続きです。
ワラビーが主役の、タイムスのファン感謝祭「ワラビーまつりin那覇」。
2階ギャラリー、
「こんにちは、ワラビーだよ!…この日53回目のせりふ…四しゃ五入したら、100回です!」 なんで四捨五入したよ。
その中でも、一番の集客を誇ったのは3階ホールだろう。
まずは段ボール迷路。挑戦する子どもたちは次々と表に顔を出して位置を確認。まるでもぐらたたきのもぐら状態であり、ほほ笑みを誘う。保護者のみなさんは周囲から見守る。
中には不安げな女性も。「あれ、ヒロトどこ行った?迷ってない?」 お母さん、迷路とは迷うものなんだ。
そして、オープン直後から大行列をつくったのが「お宝釣り堀」だ。
糸の先の磁石の力で魚を釣り上げる。言っちゃえばただそれだけなのだが、「幼い動物」に備わる狩猟本能だか採集本能だかを刺激するらしく、大人気のブースとなった。そういや、子どもはたいてい虫捕りが好きである。
…案の定、幼い動物が来た。「釣れるまでやめないのが、釣る秘けつです!」
真剣に竿を操るワラビー。磁石を熱帯魚の鼻先に引っかけると、慎重に、するすると手元にたぐり寄せていく。やがてー。
「釣れました!…じゃなくて、釣りました!」調子に乗る有袋類。「目ざすは、ばく釣です!」
「『爆釣』て。『爆買い』みたいに言うなよワラビー」 ワラビー担当いきものがかり・村井規儀がツッコミを入れた。
釣り上げた後は、魚の種類に応じてくじが引ける。この夏の大人気イベント「大哺乳類展」チケットなど豪華賞品が当たるのだ。
「当たるかはずれるかは50パーセントずつ…すると、当たる確りつは、四しゃ五入して100パーセントにちがいない…」 だから何で四捨五入するよ。
しかし、ワラビーはハズレ。残念賞のポケットティッシュを手に入れた。
「まさかのはずれです!これがあの有名な、フィッシングさぎ?」
「違うだろワラビー」村井がかぶりを振った。
このほかにも3階では彫刻家の「まくら堂」さんプロデュースの「消しゴムはんこでエコバッグ作り」コーナーが人気を集めた。
まくら堂さんが事前に用意してくれたバラエティあふれるスタンプ(消しゴムはんこ)を、布地の「キャンバス」にポンポンと押していくと、世界に一つのオリジナルエコバッグが完成するのだ。
さらに、ざまみダンボールさんは好意で段ボール製のパーランク―(締め太鼓)の材料を無償提供してくれた。
今年の旧盆には、県内各地で子どもたちが段ボールを手に、エイサー道ジュネーにセッションを挑む光景が見られそうだ。
同時進行的に多彩なブースが運営され、一日楽しめるワラビーまつり。2階では、「青少年のための科学の祭典」から出張した、「科学を楽しむ実験ブース」が設置された。
さらに今回は10階のオフィスフロアまで会場として開放され、物事を考える力・自分の意見を発表する力を養う「新聞スクラップ教室」も開催。子どもたちが記事の切り貼りに夢中になった。
さて、再び3階ホールに注目。折りしも「MR.カガック」こと金城靖信教諭(県立教育センター)によるサイエンスマジックショーが開幕した。
科学の力によるスプーン曲げや風船の輪くぐりなど、見た目にも楽しい「マジック」の数々に、来場した親子連れも釘付けだ。
ワラビーも特等席で鑑賞。「スプーンまげをおぼえたら、人気ものになれそうです!」 合コン前の大学生か。
「ワラビー、カガックがこっちを見ている気がしない?」
「サングラスで分かりません…」
「気のせいかな」
すると、カガックが壇上から声を掛けてきた。「では、最後の『実験』は、ワラビーに手伝ってもらいましょうか」
「ハッ!カガックはワラビーにスプーンの曲げ方をおしえてくれるにちがいない…!」
村井が否定した。「トリックは明かさないからトリックなんだろ」
「行ってみないと分かりません!」 スプーンの前にへそを曲げた有袋類。
そうして、舞台に上がったワラビーといきものがかり。
「カガック、ワラビーにスプーンの曲げ方をおしえて!?」
「ワラビー、そんな雰囲気じゃないみたいだよ。僕は嫌な予感がするんだけど」 静かに後ずさりを始める村井。線香のにおいが鼻をつく。
「フッフッフ…」不敵に笑うカガック。舞台前方に、巨大な段ボール箱を設置して、再び口を開いた。「行くよワラビー…空気砲!」
巨大な空気のかたまりがまっすぐ飛び出し、ワラビーを襲った。
ーむせる有袋類。「エホ!エホ!…けむいです!」
「スプーンの曲げ方だけど、煙に巻いてみたよワラビー」うまいこと言うカガック。
「エホ!エホ!…目が、半分しか、開けられません!」
「いやもともとそうだろ!」村井がツッコんだ。
その後、会場に向けても次々と空気砲を放ったMR.カガック。「武器」を手にした人類は、それを使いたくなる衝動に駆られるのか。
子どもたちは空気のかたまりを捕まえようと、大喜びでジャンプを繰り返していた。
サイエンスマジックショーも大盛況のうちに終了。幕間に子どもたちに囲まれたワラビー。
「こんにちは、ワラビーだよ!」
「心ぱいしてくれるのは、子どもたちだけです!村井せんぱいなんて…あれ、村井せんぱい?」
「村井せんぱい、どこへ行ったんだろう?きょうはさいごまで、一しょに子どもたちを楽しませる約そくです!」 ワラビーの胸はうずき、不安が顔をのぞかせた。
「もうお昼だし、ワラビーに内しょで、何か食べているかも!ズルイ!村井せんぱいは、もはやズル井せんぱいです!」 勝手に腹を立てる有袋類。
村井を探すワラビーは、ワラビー直属の上司、小林剛(経営企画室主任)とすれ違った。この「ワラビーまつりin那覇」全体を統括している小林は、朝から休む間もなくビル内を駆け回っている。「どうだワラビー、(気を)ゆるめず、(甘えを)ゆるさず、(キャラは)ゆるくやってるか?」
「ハイ!ねえ小林せんぱい、ズル…村井せんぱいがいなくなりました!」
「ああ。編集局に用事があったみたいだぞ。10分前に、エレベーターホールで会った」
「編しゅう局にいるの?」
そのころ村井は―、
「午前中までに出さなきゃいけない原稿あったの忘れてたよ。危うくデスクに怒られるとこだった。ワラビーと約束もしたし、早くワラビーまつりに戻らなきゃね」
ダーン!大きな落下・衝突音がコンクリートの壁に反響した―。
編集局へやって来たワラビー。「せっかく来たのに、村井せんぱいはいません!イナ井せんぱいです!」 「フザ井せんぱい」の方が良くないか。
RRRRR。RRRRR。コール音が数回。ややあって、村井が出た。「もしもし…」
「……うう……」受話器の向こうからは村井のうめき声。「ごめん、落ちちゃって…」
「おちた…って、どこからおちたの?今どこにいるの?」ワラビーの声にも緊張が混じる。
「ここは…」薄れゆく意識の中で、ゆっくりと頭をもたげる村井。
「村井せんぱい、どこにいるの?」
「ここは…ここは…1.1?…1.1だよワラビー」 それだけ言うと、村井はぐったりしてしまった。
「1.1って、どこなの?…でもたいへんです!村井せんぱいがケガしちゃったかも!」 電話するのも大変だな。
「…さがさなきゃ!」受話器を置いたワラビー。あらためて、いきものがかりの捜索を開始するのであったー。
謎の言葉「1.1」とは果たしてどの階を指しているのか、何を表しているのか―。ヒントはこの記事内の写真と「踊り場」です!そして、ワラビーまつりの行方は?
次回はタイムスホールにゆるキャラが大集結!「君よ真夏の華となるんだワラビー 後編」へ続きます。お楽しみに!