三千の水中花が咲き乱れてワラビー


 アートアクアリウム展 編

 夏の戻りのような残暑が那覇市久茂地一帯を包んだ9月24日、沖縄タイムスの有袋類・ワラビーは、タイムスビル内でいつものようにヒマを持て余していた。

 「ハリガネやプラスチック…ハンガーのそ材のちがいで音もちがいます!これを生かして、もっきんやてっきんのようにメロディをかなでられるかも!まずはドをさがします!」 ヒマ人の発想、ここに極まれりである。DSC_0086

 そこに飛んだするどい声。「おいワラビー」

 ワラビーの直属の上司、経営企画室主任の小林剛だ。DSC_0088

 「ハッ!小林せんぱい!ワラビーハンガー音楽たいはまだできてないよ!」

 「んなもん誰が入るか。暑いし、ちょっと涼みに行くぞ」DSC_0095

 「どこに行くの?」

 「18日にリウボウ6階で始まった、アートアクアリウム展だ」

 「楽しそうなひびきです!…でもワラビーはアートアクアてんよりは、イートインてんに行きたいです!」DSC_0092

 「そんな展示はない。つべこべ言わず行くぞ。ついてこい」

 「…ハイ」

 

 ―というわけで、タイムスビルから歩いて5分、デパートリウボウの6階催事場へやってきたワラビーと小林。DSC_0162

 「ここだな」

 「かんばんがすでにキラキラしている…きたいは高まります!」

 

 琉球朝日放送開局20周年記念「アートアクアリウム展~沖縄・金魚の結」は、約3000匹の金魚が幻想的な水槽や照明、音楽と相まって魅せる水中アートだ。同局とリウボウインダストリー、沖縄タイムスが主催している。DSC_0167

 北は札幌から東京、大阪、名古屋、博多など国内主要都市やミラノを回り、累計500万人の観客を動員して、このほど沖縄初上陸を果たした。11月15日まで。

 

 いよいよ会場へ。中は真っ暗。冷房でひんやりと涼しい。

 「くらいです!」

 「足元に気をつけろよワラビー」小林が注意を促した。DSC_0176

 入って間もなく、ライトアップされた水槽が空間に浮かび上がった。DSC_0175

 「きれいな金魚たちです!」ガラスに飛びつくワラビー。DSC_0184

 

 フナの仲間である金魚は人の手で生み出され、さまざまに形状を変えてきた「観賞魚」。その歴史は2000年前の中国で、突然変異の赤いフナが見つかったことに始まるそうだ。

 日本には16世紀、室町時代に伝来。当時は領主や大名しか見ることができなかったぜいたく品だったという。

 ―そんなことを解説している、展示会のパネルに見入る有袋類。「ほほう……」DSC_0187

 「お前、英字読めないだろ」小林がツッコむ。DSC_0189

 「分かります!金魚のことが書いてあるにちがいない…」

 「ズルいやつだな」

 

 アートアクアリウム展は、さまざまな形状の水槽を駆使することにより、金魚の群れが織りなす魅惑の光景を目の前に広げてくれるのだ。DSC_0199

 たとえばこの水槽は「カレイドリウム」。穴をのぞくと万華鏡のよう。幾何学模様の世界に優美な金魚が出入りする様子が見られる。DSC_0201

 

 さらにこちらは「プリズリウム」。ダイヤモンドのようにカットされた多面体の水槽の中で金魚たちが乱反射してきらめく、「ロマン・かがやくエステール」的豪華けんらんな作品だ。DSC_0255

 「わあー」感嘆するワラビー。

 しかし、ワラビーが近づくと、金魚たちはなぜか水槽の反対側へ。DSC_0222

 「小林せんぱい、金魚がにげていくよ!」

 「捕食者的ななにかを感じるんじゃないか」苦笑する小林。DSC_0224

 ―だが、しばらくして金魚も慣れたようだ。ワラビーの手に近づいてくるようになった。DSC_0227

 「かわいいです!金魚の口はどこかしら、笑っているようにも見えるよ!」DSC_0239

 

 「金魚コレクション」では、通常なかなか見られない高級品種や珍種もそろう。

 水中をゆったり、揺れるように漂うように泳ぐ金魚の群れ―。DSC_0286

 ―神秘的で幻想的で、DSC_0272

 ひととき、時間を忘れさせてくれるようだ。DSC_0306

 

  さらにベネチアガラスとコラボした「サンタマリア デル ペッシェドーロ」のコーナー。DSC_0394

 「ここの金魚は上からも楽しめます!」

 「うん。ガラスの器が無かったころ、金魚はそもそも上から鑑賞するものだったらしいからな」

 

 そして、今回のメーン展示がこちら。その名も「花魁(おいらん)」。「圧巻」のひとことである。

 「すごいです!」興奮する有袋類。DSC_0324

 江戸の遊郭を巨大な金魚鉢に見立てた作品。約1千匹の金魚があでやかに泳ぐ様子は、遊郭でしか生きられなかった女たちのはかなさを表現したという。DSC_0377

 普通の女性としての幸せは叶わなかった遊女たち。やりたかったこともやれず、まさに「かごの鳥」か「鉢の金魚」か、というところであろうか。

 「…ワラビーはこの作品を見て、やりたかったことを思いだしました!」そうして、何かを取り出した有袋類。「金魚すくいです!」DSC_0363

 どうやらハンガーとキッチンタオルで「ポイ」を自作したようだ。静かに金魚と向き合うワラビー。DSC_0346

 「うでがなります!金魚すくいと言えば、まつりの主やく…ワラビーはこのブログの主やくです!」 だから何だ。DSC_0348

 

 「…ってやめろ!」小林に止められたワラビー。

 「あっ」DSC_0361

 ※照明のため、いつもより幻想的なツッコミとなっております。

 「まったくお前は油断もすきもないな。どうしてそう衝動のままに動くんだ!」

 「だって小林せんぱい、金魚もはちの中からすくわれたいにちがいない…」DSC_0353

 「金魚すくいは『金魚救い』じゃない!」

 「…ええー!」

 「もういい、出るぞ!ついてこい!」DSC_0356

 

  水面の向こうに透ける魚たち。小林がワラビーを率いてきた場所とは―。

 「ほらワラビー、ここで思い切り魚をすくえ」DSC_0127

  ―久茂地川だったDSC_0121

 「…ええー!ワラビーはきれいな金魚をすくいたいです!」

 「ここなら誰にも怒られずに、すくい放題だ」

 「やってみます……ムリです!ワラビーのポイは川のながれにかてません!」DSC_0141

 「いいからすくえ!」

 「ムリです!ゆるして小林せんぱい!」音を上げるワラビー。DSC_0152

 

 …あなたも、久茂地の御成橋を渡る時は、そっと川のほとりを見てほしい。運が良ければそこに、懸命に小魚をすくおうとする有袋類が見られるかもしれない―。DSC_0153

 

 ~ワラビーからお知らせ~

 すでに来場1万人突破!のアートアクアリウム展は11月15日まで、デパートリウボウ6階催事場でやってます!

 会期中は休みなしの午前10時~午後8時半まで(最終入場午後8時)だよ!

 当日券は大人1000円、小中学生800円です!

 撮影は自由(ただしフラッシュは禁止)なので、ぜひカメラを持ってきてね!

 お問い合わせは沖縄タイムスサービスセンター、電話は098-869-3000(平日10時~18時)です!

 みんなで遊びに来てね!待ってます!DSC_0391


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