暮れゆく街と心に光を灯せよワラビー
くもじイルミネーション点灯式 編
11月の沖縄。日中は汗ばむ陽気になったりもするが、さすがに朝晩は涼しい風が吹く。季節は着実に深まり、暦は年の瀬へと歩みを進めている。
そんな13日夕、タイムスビル1階ロビーで待ち合わせるワラビーと、ワラビー担当いきものがかり・村井規儀の姿があった。
「ごめんごめんワラビー、待った?」
「ハイ、ヒマなので20分まえから…えっと…今きたところです!」 気の使い方がヘタな有袋類。
「時間をどんぶり勘定で使えてうらやましいやつだな。じゃあ行くよ」
「荷物を持ってあげるよワラビー」気の使い方が上手な村井。「ところで、このバケツは何?」
「あとのおたのしみです!ありがとう村井せんぱい!」
そうして、1匹と1人は薄暮の街へ繰り出した。
この日は那覇市の中心オフィス街・久茂地近辺の15社・団体が参画した「2015くもじイルミネーション合同点灯式」が、久茂地のランドマークである複合ビル「パレットくもじ」前広場で行われた。沖縄タイムスも参画企業に名を連ねることから、ワラビーにも出演オファーが来たのだ。
「去年は里子せんぱいと行きました!あれからもう1年です!」
「体重が…えっと、より中身が充じつしたワラビーになりました!」
「『物は言いよう』という言葉をささげるよ」 あきれる村井。
午後6時前の広場には続々と人が集まり、メーンのクリスマスツリーに点灯される瞬間を待ち構えていた。ちなみに今年のツリーのテーマは「フォーエバーブルーミング~思いを咲かせたい、思いを残したい~」。著名なフラワーアーティスト、ニコライ・バーグマン氏が手がけたという。
―ワラビーと村井も到着。
「ハイ!村井せんぱい、この中にはワラビーのゆめがつまっています!」
「抽象的だな。もったいぶらずに教えてよ」
「去年の点とう式では雪がふりました!」
「ああ、降ってたね。ロマンチックだったね」
「だけど、ワラビーはかき氷シロップがなくって、くやしい思いをしました…」
「食べる気だったのかよ!」
「というわけで、ことしはこのバケツで雪をあつめて―」
ワラ「まずはブルーハワイです!」
ワラ「そして、レモンあじからの…」
ワラ「イチゴミルクです!これはそのまま飲んでもおいしいにちがいない…」
村井「…青・黄・赤って、信号機かよ!」 そして最終的に赤信号だ。
「ワラビー、スプーンはこうして、パクッとくわえた方がかわいさが出るよ」
「ハッ!さすが村井せんぱい、ワラビーの一歩先いくそんざい…」 何で韻踏んだよ。
そんなどうでもいいやりとりはさておき、合同点灯式は昨年と同じく、善隣幼稚園の園児たちの歌声で幕開け。
澄んだ声の「あわてんぼうのサンタクロース」が響くと、年末気分は高まった。
一方、出番までの待ち時間にストリートバスケの1ON1を挑まれた、ムードもへったくれもないワラビー。
セレモニーはいよいよ点灯へ。参画企業・団体の代表者と善隣幼稚園の園児がペアを組んでステージへ上がった。ボタンを押すと、各企業がそれぞれのビル周辺に設置したイルミネーションも一斉に点灯する手はずになっているという。
カウントダウンが始まった。「5秒前」「4」「3」「2」「1」「ゼロ」
まばゆい光が人々の笑顔を照らし、そこかしこで拍手と歓声が起こった。少々気の早い「メリークリスマス!」の声も聞こえる。
ひき続き、参画企業のゆるキャラたちが入場した。
琉球放送のSUNちゃん、沖縄都市モノレール「ゆいレール」のゆっぴー、大同火災のデイゴーマンとともに観客の前へ現れたワラビー。「こんばんは、ワラビーだよ!」
手にはわざわざ「激しく光る棒」を持った、目立とう精神の有袋類。
「イルミーだよ!」 ワラビーだろ。
「村井せんぱい、あとは雪がふるのをまつだけです」
「食いでがあるくらい、いっぱい降るといいねワラビー」
しかしー。
「なかなか、ふりません!」 バケツとスプーンを手に、天をあおぐ有袋類。
「雪やこんこ!です」
昨年は点灯後、ほどなくして降った人工雪。今年は降る気配はない。
「今年はふらないのかな…」
見かねた村井が、イベント本部へ尋ねに行った。
戻って来た村井。「ワラビー、雪なんだけど」
「それが、もう降っちゃったんだって。イルミネーション点灯と同時に降らせたんだけど、風に乗って2階テラス方面へ流れ、1階にはほとんど降らなかったみたいだよ」
「ええー!ワラビーの三色かき氷が…」 落ち込み、その場に崩れた有袋類。
子どもたちが心配して声をかけてきた。「ワラビーだいじょうぶ?」「おそうじ中なの?」
「そうか!」村井が何かを思いついたようだ。「ほらワラビー、顔を上げてそのバケツを貸してみな」
「村井せんぱい?」
「このバケツをひっくり返して、頭に乗せる、と…ほらワラビー、雪は降らなかったけど、雪だるまっぽくなれたよ」
「雪だるま!?」
鏡もち?…違う、雪だるまだ。可能性あふれる二等身 スノーマンワラビー
子どもたちからも歓声が上がった。「雪だるまだ!」「見える見える!」
「あれ、ダメだった?かわいいじゃん、雪だるま」
「ワラビーは雪だるまになりたいんじゃなくて、雪を食べたかった…」
「ごめんごめん、もう帰ろうかワラビー」
「帰って会社でかき氷作ろうよ」
「やった!そうこなくっちゃ!さすが村井せんぱいです!」
イルミネーションよりも安定の食欲優先。やっぱり「花より団子」のワラビーなのであった―。
~ワラビーよりお知らせ~
くもじイルミネーションは来年1月末まで続きます!