ことばと体を命のために使ってワラビー
リレー・フォー・ライフ・ジャパン2015沖縄うらそえ 編
11月14日正午。小雨がぱらつく中、浦添市カルチャーパークに集った人たちがいた。
同じく集った、人でないものたちもいた。
人たちと人でないものたちの間に、明るい曲調のメロディーが流れた。これは間違いなく「ラジオ体操第二」だ。
壇上の男性が呼びかけた。「24時間ウォークです。雨で冷えないように、しっかり体をほぐしましょう!」
やがてラジオ体操にあきたワラビー。琉球朝日放送のQごろ~の頭上アンテナを引っ張る。「Qごろ~も体をのばして!…ニーブラ!」 「ニーブラ」言うな。
「きゅ~ん!」嫌がるQごろ~。
「ワラビー…あいつ何やってんだ」 少し離れた位置で見守るのはワラビー担当いきものがかり・村井規儀(沖縄タイムス編集局学芸部主任)
そんなワラビーたちがやって来たのはがん患者支援のイベント「リレー・フォー・ライフ・ジャパン2015沖縄うらそえ」(主催・同実行委員会、日本対がん協会)。
テーマは「がんを語ろう!ちむぐくる沖縄」。がん患者やその家族を支え、地域でがんと向き合い、がんを制圧しようという目的がある。
医者や看護師ではない、直接医療行為に従事していない人でもがんを知り、募金などに協力したりすることで間接的に命を救えるという。
イベントは14日正午から15日正午までと、長丁場。
がん患者は24時間病気と向き合っている点から、チーム単位で夜通し歩き続ける「24時間ウオーク」をはじめ、がんの早期発見や治療についての講演会や音楽イベントなどが2日間にかけて行われたのだ。
※14日に大雨警報が発令したため夜間は中断しました。
今回、実行委から「ワラビーも歩きませんか」と声をかけられた有袋類。
「目の付けどころがすてきです!きっと遠くのミドリをよく見ているにちがいない…」
「村井せんぱい、ひどいです!」ぷんすかする有袋類。「でも今日はリレーをやるってききました!」
「そうだね。24時間歩き続けることで、がんについて広く世の中に知らせるんだ。命をより長く、遠くへつなぐために歩くのかもしれないね」
「いのちのリレーです!…ハッ!そうなると村井せんぱい、バトンをわたす練しゅうが必ようです!」 そう言うと、どこかへ向かったワラビー。
「おい、どこ行くんだよ!?」
―戻って来た有袋類。「じゃあ、ワラビーがバトンをわたすよ!」
「ていうかリレー・フォー・ライフの場合、バトンを渡す速さは関係ないだろ」
「心がまえの問だいです!…いきます!」
走り出し、村井との距離を縮めるワラビー。
ワラ「ハイ!」
「―そうそう、このつえがほしかったんじゃ。おじいちゃんおじいちゃん…」
「…っておい!違うだろワラビー!これバトンじゃなくてつえだろ!」
「こんどはちゃんとやります!」
ワラ「…ハイ!」
「…って完全にタンバリンだろ!思わず打ち鳴らしちゃったよ!」
「かれいなノリツッコミ…村井せんぱいは、さすがです!」感心するワラビー。
その後も、なぜかバトンを手渡せないワラビー。
ワラ「村井せんぱい、ハイ!」
ワラ「形はどんどんバトンに近づいてます!」
村井「そういう問題じゃないだろ!」
「それ完全にチュロスだろ!いま自分でも言ってただろ!」
~回想~
~回想終わり~
「何でチュロスが出てきたのかに加え、何で回想シーンがはさまったのかも意味不明だよ!」
「ワラビーも、なぜチュロスをもっていたのかわからない…」
「うーん、チュロスかー」 「チュロス」って言いたいだけだろ。
そんなどうでもいい事をやっている間に、「24時間ウォーク」はスタート。まずは当事者であるサバイバー(患者)とその家族から広場を回り始めた。「行ってきます!」
広げた白い布にはサバイバーのカラフルな手形が。元気よく歩みを進めていく。
2周目に入り、いよいよ行進に加わった有袋類。「バトンがありません!あの練しゅうはムダになりました!」
「道のわきに、豆ちしきもあります!」 歩きながらがんの事を知る工夫なのだろう。
―しかし、それから間もなくして。
「バテました!ハア、ハア…」
「ワラビーはもう歩けないです!」 音を上げる有袋類。
「情けないな。がん患者は24時間病気と闘っているんだよ。歩いたの、せいぜい10分だろ」
「ワラビーはもううごけないけど、たいへんなびょう気とたたかう人たちを尊けいすることはできる…」
「調子がいいなまったく。バトンパスの練習で体力使ったんだろ」 あきれる村井。
ーさらにこうなった。
よろめくワラビー。「思いのタスキは体じゃなくて、ことばでつなぎます!」
「まあ頑張りなよワラビー」
「ハイ!」
今後もがんの啓発に一役買うことを胸に誓った、ワラビーなのであったー。
~おまけ~
なぜかワラビーと子どもにバナナを強要される(バナナハラスメント)ゆ~たん