2016ご入学おめでとう大会　編

　沖縄に大寒波が襲来し、本島で初の「雪」が観測された1月24日。

　名護市民会館には、身を切られるようなつめたい風が吹きすさんでいた。午後2時現在の気温は７．８度。体感温度はさらに低いであろう。

　「…………」

 

　「でかいブタを見つけたと思ったら、銅ぞうでした！ざんねんです！」市民会館前の、アグー像のかたわらに座り込んだワラビー。

「ヒマなワラビーはブタさんとトークしたかったのに！…ハッ！ブタさんとトークすることを『ポーク』と名づけよう…」　まぎらわしいし意味違うし。

　この日同館で行われたのは、新一年生と家族のつどい「２０１６ご入学おめでとう大会」（沖縄タイムス主催）。今春に晴れて小学校へ入学する子どもたちが、ドラえもんの映画やお笑いコントなどを通し、初めての学校生活や交通安全のルールを学ぶイベントだ。入場は無料。

　昨年同様、今年も24日の名護市を皮切りに31日の那覇市民会館、2月14日のうるま市石川会館と3会場で行われる。すべて午後１時開場、1時半開演となっている。

　「おもてに全ぜん人がいません…」子どもたちの姿を探していたが、ほどなくして、中庭ではしゃぎだした。「こんなに風がふいて、気もちがいい日なのに！キャッキャ！」

 

 　ふかふかの毛皮に覆われたワラビーは、どうやら気温が低い方が元気になるようだ。「快てきです！」

　「♪ララッラ～ランドセル～は～♪」今年も「天使のはね」的な歌を歌いだす有袋類。

　「♪ルルッル～ルールをけちらせ～♪」　ロックかよ。

 

　―そこで、市民会館の中から出てきたのは北部支社販売部の宮城一彰。こちらも昨年同様、名護市のおめでとう大会の担当となり、会場に詰めていたのだ。

　「う～、さむさむ」

 　ロマンス探しに年中夢中　弱気なオレはそのうち喪中　そろそろ後がない独身　北部支社販売部　宮城　一彰

　　　そこで、ワラビーに気づいた宮城。（あいつ、この寒いのに何やってんだ…）

　宮城は有袋類に近づいて声を掛けた。「おいワラビー」

　「あっ、宮城せんぱい！あけまおめでだよ！」

　「ああ、明けおめ。…そのあいさつ、流行るのか？」

　「ワラビーてきには、とにかくトリプル爆はやりです！」

　「いろいろ混ざりすぎだろ。そういやお前、毎年恒例の、新一年生との記念撮影会があるだろ」

　「ハッ！そうだった……でも、人っ子ひとりいません！」

　「バカ。この寒さだから、さまざまなブースはみんな室内に設置したんだ。子どもたちも中にいる。ほら行くぞ」

　「それより宮城せんぱい、ワラビーと海を見にいこう？」せりふがチャラい有袋類。

　「『ねえ、ふたりで飲み会抜け出さない？』みたいに言うな！戻るぞ！」

　「…えー！」　むくれる有袋類。

 

　市民会館ロビーは新1年生とその保護者のはずんだ声に満ちていた。

　沖縄タイムスは「新聞ふれあいコーナー」を設置。新聞を使った「ひらがなさがし」や、子ども新聞「ワラビー」から答えを探す「ワラビークイズ」など、親子で新聞を楽しみ、新聞に親しむ空間となっている。

　運営に当たるのは、北部地域の新聞販売店主のみなさん。

　地域の子の節目を喜び、その成長をそっと支えているのだ。

　一方、舞台はＦＥＣのお笑いコンビ、大平スタイルさんの軽妙な掛け合いで進行した。

　コントによる交通安全指導やフラッシュ暗算、ドラえもんの学校探検などの演目が、学校生活を控える子どもたちのワクワクを高めた。

　

一方、ワラビーとの写真撮影会もスタート。

　写真はタイムスの北部通信員も務める宮里販売店主、島袋仁明さんがプロ級の技術と機材で撮影した。

 　経費等も含め、1枚300円。新聞記事の形でラミネートして後日、ご自宅までお届けするのだ。

　「宮城せんぱい、こんなかんじですよね？」

　「おい！去年のやつ出すなよ！」

　「そういえば、春からあたらしい恋は、生まれたの？」

　「とぼけた顔して鋭い質問だなワラビー。オレ、宮城もたじたじだろ！」

　ワラ「宮城せんぱいには、ときめきが足りません！」

　宮城「そうかな…そうだな。もう女性とのデートプランを立てたりするのも面倒になってきたしな」　リアルなやつかよ。

　ワラ「だから、こうです！」

 

　宮城「出た―！人生がときめく片付けの魔法ー…ってこんまりかオレは！」

　ワラ「あとは、いきおいも足りません！だから、こうです！」

 

　宮城「いや、オレなん号生筆頭だよ！見出しもおかしいだろ！」

　ワラ「あつめるのはまかせて！」

　宮城「その分担もおかしいだろ！」

 

　今年も宮城を存分にいじったところで休憩時間。ワラビーは昨年に引き続き、一匹で市民会館からほど近くの海を見に来た。

　「去年はネコのランチによばれたけど…今年はだれもいません！」正確に言えば、去年は逃げられたのだが。

　荒れた海。さらに寒風がびゅうびゅう吹き荒れている。「さみしい…」

　不意に、波しぶきが飛んできた。「あっ！つめたい！」

　「はなの頭がぬれちゃった…」　いつもだろ。

　しばらくして、ぶるぶるふるえだしたワラビー。「あれ、波がかかってから、きゅうにさむくなってきた…ックシュン！」

　水が蒸発しようとする気化熱に体温を奪われたのか、震えが止まらない有袋類。

　「さむいしさみしい！村井せんぱいに会いたくて、ふるえます！」　西野か。

 

　結局、寒さに耐え切れず、名護市民会館に戻ってきたワラビー。「さむい…さむい…」

　自動販売機で暖を取ろうと試みる。「あったか～い…くないです！」。

　ーしかも。

　「ハッ！…かぎがかかっています！」　休憩時間も終わったので施錠され、締め出されてしまった。

　「さむい、開けて！」

　しかし、中の人がワラビーに気づくけはいはない。

　「ックシュン！さむいです！ワラビーもなにかを着たい…海なんか、行かなきゃよかった…」

　辺りを見回し、風よけになりそうな物を探した。「ハッ！…あれは！」

　　「とりあえず、ワラビーのトサカを守って」

　「手もあっためます！」　

 

　―１０分後。

　ドアが開錠され、宮城が現れた。「よし、おめでとう大会もぶじ終わり、あとはお見送りだ…さーむい！」

 

　表の光景を見て、すっとんきょうな声を上げた宮城。

　「…雪だるま！？」

　「ちがうよ宮城せんぱい！ワラビーだよ！さむかったです！」　言うなり、宮城に抱きついた有袋類。

　「何でそんな濡れているんだよ？」

　「海のせいです！」

　「あと、それ防寒になってるのかよ！？」

　「トサカは体のはじっこだから、あっためなきゃ！」

　「よく分かんないけど、あったかいドリンク買ってやるから、中に入れワラビー」

　「やった！」

　寒波の訪れに、まさかのスノーマンワラビーも再来。こんなことやっていたから本島で初の降雪を招いたのかもしれない、われらがミラクル有袋類であった―。

 

　～ワラビーからお知らせ～

　新1年生と家族のつどい「ご入学おめでとう大会」は１月３１日（日）に那覇市民会館、2月14日（日）がうるま市石川会館で行われます！

　どちらも午後1時開場、1時半開演の3時終了だよ！

　会場では楽しい舞台や新聞ふれあいコーナー、それにもちろん、ワラビーがみんなを待ってます！

　「みんなであそびにきてね！」　郷土の損害保険会社、大同火災さんのデイゴーマンも待ってます！