ひもじき腹のち心を満たすんだワラビー
沖縄タイムス販売店×フードドライブ 編
梅雨時らしく、薄墨色の空をいただいた5月某日の浦添市の文化施設・てだこホール。
ガラガラガラガラ…。昼下がりの貸し会議室前に、車輪の転がる音が牧歌的に響いてきた。さらに、見覚えがある不吉なエンブレム。
「…ワラビーサーキットは直せんから、カーブに入ります!」
愛車・ワラビーベンツにまたがり、久茂地の有袋類・ワラビー登場。
「カーブはどうまがるんだろう?えっとえっと…アウト、アウト、アウト?」
3アウトチェンジか。
「…つきました!ザザーッ!」 「ザ」行でピットインする有袋類。
―到着先の会議室では、沖縄タイムスの浦添・西原販売店連合会(浦西連合)の店主らが集まっていた。
「こんにちは!ワラビーだよ!フードドライブはここですか?」
―その時、会議室内では沖縄タイムス浦西連合会長・新城教夫さん(浦添市・前田販売店主)が、テーブルに広げられた食品の整理の真っ最中だった。「やあワラビー。いらっしゃい」
「…ハッ!食べものがいっぱい!」 あいさつもそこそこに、食品に目を奪われた有袋類。お米にそうめん、サバ缶にのり、袋めんにカレールー、しょう油などがテーブルの上に所狭しと広げられている。「ここはきっと、ワラビーがゆめにまで見た、パントリーという場しょにちがいない…」
「違うよワラビー」新城さんが否定した。「これは浦添西原連合会が取り組む、フードドライブ」
「そうです、ワラビーはおもと竹本せんぱいにたのまれて、そのフードドライブをしにきたのです!」声を弾ませる有袋類。「おてつだいします!」
「助かるよワラビー」
「フードドライブのやり方はかんたんです!」
「ワラビーが食べたいものをえらんで、ふくろづめして―」ビニル袋をガサガサ言わせる有袋類。
「その点では、フードドライブとドライブインはよくにています!」 どこがだ。
あわてて表に出て、食料を持って去ろうとするワラビーを止めた。
「キャッ!どうしたの新じょう店主?」
「フードドライブは、そんなんじゃない!」
フードドライブは、地域や学校、職場、イベント会場などで食品を募集し、福祉団体や自治体などを通して生活に困っている家庭へ届けるボランティア活動。
「子どもの貧困」問題が全県的な課題として注目される中、浦西連合もこの3月から、独自に活動を開始したのだ。
「…だからこの食品は、おなかを空かせた子どもやその親に食べてもらうものなんだ」
「ワラビーも、おなかをすかせた子どもの一員です!」 偉そうに。
「ワラビーの場合、タイムスビルに戻ればいつも、何かしら食べ物があるでしょう?でも県内には、その日の食事が学校の給食だけ、という子どももたくさんいるんだ。その子たちが優先!」新城さんが厳しく指摘した。
「そうなんですか!すいません…」しゅんとなる有袋類。
ー事業開始のきっかけは、浦添、西原の販売店主が読者から「貧困家庭を支援したいが、その方法が分からない」との声を複数聞いたこと。「新聞販売店にも何かできないか」。店主らは話し合いを重ねた末に、「顔なじみの店主なら、支援したい人も気楽に食品を届けられるのではないか」という結論に至ったという。
店主は各家庭に食品の寄付を呼び掛けるチラシを配っているほか、依頼があれば地域住民のもとへ回収に出向き、市ボランティア連絡協議会や市社会福祉協議会(社協)へ届けている。
新城さんは説明を続けた。「今月もわれわれが担当する浦添、西原地域に住むみなさんから、これだけの食品が集まったよワラビー。私たちタイムス販売店は、困った家庭を支援したい人と福祉との仲介役になりたい…橋渡しをしたいんだよ」
「すてきです!大じな食べものを分ける人もやさしいし、もらった人はおなかの次に、むねがいっぱいになるにちがいない…」 感心するワラビー。
「新じょう店主、ワラビーも今日のおやつのみそラーメンをきふします!」珍しいな。
「ああ、ありがとうワラビー。そうそう、カップめんなんかも助かるよ。乾物なら保存もきくしちょうどいいね」
「かんぶつ?」
「乾いたものだよ」
浦西連合は食品の回収対象を①未開封(米を除く)②賞味期限が1カ月程度残っている③冷蔵、冷凍でない④アルコール類ではない―としている。お中元やお歳暮などのギフト食品のほかビンや缶詰、インスタントやレトルト食品、調味料、菓子、飲料、乾物などを受け付ける。
「乾いたもの…じゃあ、これも!乾そううめぼしです!」 ベタな方角へ走る有袋類。
「…ハッ!新じょう店主、ワラビーはひらめきました!」ひとみを輝かせる有袋類。「もしも、生ものをもらった場合でも、乾かせばいいです!」
「何を言い出したんだいワラビー?」
「いやドライヤーはダメだよワラビー」戸惑う新城さん。
「違うよワラビー。そもそも食べ物じゃないでしょう」
「そういう問題じゃないよワラビー」あきれた顔の新城さん。
「…乾いてるのに?」 そっちかよ再び。
ワラビーの的外れなフードドライブはさておき、全員で集まった食品を、浦添市ボランティア連絡協議会の友利有希さんの車へ運ぶことに。
「ワラビーも手伝います!」
―ところが、集められた善意の重さにうれしい悲鳴を上げる販売店主ら。
そこで有袋類が提案した。「店主のみんな…ワラビーベンツを使って!」
宮城・屋冨祖三丁目販売店主の城間正さんが感謝した。「台車を持ってきてたんだ。助かるよワラビー」
「台車じゃないよ!ワラビーベンツだよ」
城間さんが応じた。「ハハハ。じゃあ『かつて台車と呼ばれてたワラビーベンツ』かな」 プリンスか。
友利さんにお礼を言われる有袋類。「ワラビーありがとう。私たちも販売店主さんと協力して、生活に困っている方への支援の輪を広げていくね」
「ハイ!ワラビーもタイムスも、はん売店主のみんなもがんばります!」 力強く返事したワラビー。
「子どもの貧困」解消には息の長い取り組みが必要。販売店主の自発的な取り組みに感化され、誰もができることを考え、そして始めてほしいと願うワラビーであった―。
浦西連合の店主のみなさん「地域の皆様からの食品提供、お待ちしています!」
浦西連合のフードドライブについてのお問い合わせは沖縄タイムス読者局、098(860)3565までお願いします! (平日午前10時~午後5時)
~ワラビーよりお知らせ~
沖縄タイムス社でも「子どもの貧困」解消の支援事業「沖縄こども未来プロジェクト」が始まっています!
賛同していただける企業などからサポーターを募り、寄せられた会費・支援金を子どもの貧困にかかわる民間団体等の支援に充てます。
県民の皆様のご理解とご協力をお願いします。詳しくはこちらのページでご確認ください。
~ワラビーよりCM~
「ワラビーがのっています」を車に付けて、路上の「かわいい!」を集めよう!
新ワラビーグッズ「ワラビーカーサイン」はタイムスのネット通販サイト「タイムスギャラリーショップ」で好評販売中です!
キュートなワラビーを車につけて、小さなお子さまとのお出かけが楽しくなる!ちょっとした出産祝いなどにも最適です!
価格は税込み1000円、別途送料がかかります。詳しくはこちらの販売ページまでお越しください。
また、同グッズは那覇市久茂地2-2-2、タイムスビル10階の読者局でも販売しています(平日10~17時)。近くにお立ち寄りのついでにでもお求めください。
素晴らしい!
3月からそんな素敵な活動が始まっていたんですね。
ゆいまーるの精神が詰まっていると感動しきりでした。
私も考えるだけでなく行動しなければ!
ワラビーちゃん、こんどはちがう車種にも乗ってみてー。
とらが前あし上げてるみたいなヤツとか。