真夏のフェスのヘッドライナーだワラビー(前編)


 2016 ワラビーまつりinなは 編

 2016年8月7日早朝。那覇市久茂地は、あいにくの雨空に覆われていた。タイムスビル周辺にも人けはない―。

 

 ―ビル3階、タイムスホールの舞台裏ではこの日の主役、ワラビーが出番を待っていた。

  「おじいさんは、かぶをぬこうとしました。・・・けれどもかぶは、ぬけません。『うんとこしょ、どっこいしょ』」

 優雅に読書を楽しんでいる。どうやら、有名なロシア民話のようだ。

 「『そうだ!』・・・おじいさんは、おばあさんを、よんできました」

 「ハッ!おばあさんばかりか、イヌもネコも、おじいさんによばれている・・・!はたしてワラビーもよばれるのか・・・目がはなせません!」 ロシアに有袋類はいないぞ

 そこで、「おおきなかぶ」から目を上げた有袋類。「ワラビーもよばれる…?しまった!きょうは、おおきな、おおきな、ワラビーまつりです!」

 

 沖縄タイムスのファン感謝祭、「ワラビーまつりinなは」。夏休みの子どもたちに本社ビルのタイムスビルを開放して、一日遊んでもらうイベントだ。毎年楽しみにやって来る「リピーター」の子も増え、真夏のオフィス街にも定着してきた。この日も雨天にもかかわらず、オープン時間に合わせるように続々と、多くの親子が集まってくれた。

 1階エントランスでオープニングを飾るのはファミリー吹奏楽団「ビビデバビデブー」。一曲目は「幸せのリズム」。軽やかな行進曲風のメロディ。元気な演奏と鮮やかなピンクのユニフォームが来場者の気持ちを盛り上げる。

 

 一方、こちらはオープニング会場へ向かうワラビー。「うんとこしょ、どっこいしょ…。どこではじまるか忘れたけど、音のなるほうへ行けば、たどり着くにちがいない…!」

 「…わあー!1階のおもてがにぎやかです!」

 その1階では沖縄タイムスの販売店主のみなさんが、お面をかぶってワラビーにふんする「なりきりワラビー」やバルーンアートを仕込み中。

 「ほらワラビー、みんなの前に出るんだから、自分を飾ってもっと目立たないと」 豊見城販売店の國吉久美店主がワラビー面を付けてくれた。

 「デコります!…といってもおでこではない…耳です!」 まぎらわしいな。

 ビビデバビデブーの1曲目が終わり、来場客の前に登場した有袋類。「ハア、ハア…ワラビーだよ!きょうはワラビーまつりへようこそ!」

 ワラビーだ!」「ワラビー来た!」子どもたちの歓声が上がるタイムスビル前。

 「きょうはワラビーまつりでもりあがるので、ワラビーが住むこの『大とかい・なは』が大とかいをこえる……『とかい・なは』になります!」 画数かよ。

 

 ビビデバビデブーの2曲目は、おなじみ「踊るポンポコリン」。こちらも雨空を忘れさせるような楽しいメロディを響かせた。

 しばらくバルーンを振り回していたが、やがてそわそわし始めた有袋類。「ワラビーも主やくとして、さんかします!」

 体を反転させるワラビー。「たしかここに…ありました!ワラビーハンガー音楽たいです!」用意されていたのはハンガーラック。

 「ハリガネやプラスチック…ハンガーのそ材のちがいで音もちがいます!このちがう音たちで、ハープのようにメロディをかなでます!…行くよ!」

 曲に合わせてハンガーをカチャカチャつま弾きだす有袋類。(ワラビーだけ)楽しそうなセッションが開幕した。

 かつて県内の新進音楽家たちにセッションを仕掛けたこともあった「ワラビーハンガー音楽たい」だが、常人の耳には「カチャカチャ」という音しか聞こえないのだ。

 「ホウ…たのしい!」満足げなワラビー。「新しいポンポコリン…ポンポコ新だよ!」 「新ポコリン」じゃないんか。

 

 ―なんかカチャカチャしてる間にビビデバビデブーの出番とワラビーの茶番もひとまず終わり、いよいよお客が入場。2016年の「ワラビーまつりinなは」が開幕した。

 

 会場では毎年大人気、販売店主のみなさんによるバルーンアートコーナーや、

 「なりきりワラビー」工作コーナーにはさっそく人だかりができた。

 糸満市の工房「ニャン山」さんによる「しっくいシーサー色付け体験」も例年、好評を博しているブースだ。真剣な表情で、世界に一つだけの作品に取り組む子どもたち。

 新聞と触れ合う「ワラビークイズ」「ワラビーパズル」コーナーでは新聞の中から正解を探したり、見出しと写真、記事をうまく並べたり。遊びながら読解力を育て、新聞のしくみを学べるのだ。

 今回はじめて導入されたのが,タイムスビル各所に設置されたワラビーはんこを押していくスタンプラリー。消しゴムはんこ作家「まくら堂」さんのオリジナルスタンプだ。

「まくら堂」さんが制作したキュートなオリジナルスタンプたち

 そのまくら堂さんのブースが「消しゴムはんこでバッグづくり」。

 白いキャンバスにポンポンはんこを押すだけでかわいいキャラクターバッグが作れちゃうのだ。

 雨天が室内イベントにプラスに働いたのか、オープニング後またたく間に、会場は大勢の人でにぎわいを見せた。

 

 「スタンプを集めると、屋台でおかしと交かんできる…ぜいたくなシステムです!」

 「何をやっているんだいワラビー?」

 「おこぼれねらいです!」 言い切りやがったな。

 

 「…うまいぼうを1ふくろ、もらえました!ふとらないように、よくかんで食べよう…」 「甘やかされ体型」め。

 

 さて、3階タイムスホールでは、舞台での演目のほか、広いスペースを生かした体験イベントが目白押し。

 少年少女の前に人生初の壁となって立ちはだかる「段ボール迷路」のほか、

 ざまみダンボールさんに全面協力してもらった「ダンボールのパーランクー(小太鼓)づくり」に加え、

 子どもたちの狩猟本能をひきつけてやまない「キャラクター釣り堀」は磁石を使って「おばあタイムス」などタイムスゆかりのキャラクターを釣り上げるもの。こちらも常時、行列が絶えない人気ブースだ。

 いつの間にか、釣り堀にスタンバイしていた有袋類。「今ためされる、ワラビーの釣りパワー…『しゅっせ魚の呪もん』をとなえて、魚をひきよせます!イナダハマチブリ…イナダハマチブリ…イナダハマチブリ…」 何それ

 「フグカラハリセンボン、フグカラハリセンボン…フグカラハリセンボン……あっ」 「フグ→ハリセンボン」おかしいだろ。

「やった、ばく釣です!おばあゲットだよ!」 嬉々とする有袋類。

 

  その頃、ホールに会場を移したビビデバビデブーの演奏がふたたび始まった。

 普段は保育施設などを中心に訪問演奏している同楽団。仕事や育児の合間を縫って日々の練習をこなしている。

 子育てをしながらでも、むしろ子育てをしているからこそ、音楽の楽しさを「至近距離」で子どもたちに伝えられるのだろう。

 

 こちらも、うずうずしている「子ども」が一匹。「ワラビーも入りたい…でも『ハンガー音楽たい』は1階においてきちゃった!」

 

 すると、楽団員の女性からうれしいお誘いが。「次の曲は、となりのトトロでおなじみの『さんぽ』ですが、ここでゲスト指揮者を呼びたいと思います…ワラビー!

 「指きしゃ…やります!」張り切る有袋類。

 会場の拍手に迎えられ、楽団の前まで進み出てきたワラビーだが、そこではたと気付いた。「ハッ!…タクト(指揮棒)がないよ!どうしよう?」

 

 ピンチに駆けつけたのは、沖縄タイムスデジタル局システム部の知花泰貴。「ワラビー、これ使って」

 「これは…釣りざおとバルーンアートです!ありがとう知花せんぱい!」

 

 ワラビーがタクトを構え、振ると一斉にオケが鳴りだした。

 会場に響く、のびやかで軽快なメロディ。歌っている子もいる。笑っている子もいる。踊っている子もいる。

 「ヒトも楽きも、どんどん、うたって!たのしい!」ノリノリの有袋類。

 …もちろん、だれも指揮を見ちゃいない

 それでもそこにいた子どもや大人はたしかに、幸せな時間を共有していた―。

 「ありがとう!ワラビーでした!」 会場から温かい拍手がわいた。

 

 同時刻。

 約2年ぶりに、あの「小さな恐怖」がタイムスビルに襲来したことを、ワラビーはまだ知るよしもない―。

 

 「真夏のフェスのヘッドライナーだワラビー(中編)」に続きます!

 

 ~ワラビーからお知らせ~

 8月6日(日)は、いよいよ「ワラビーまつりin那覇」開催です!午前10時~午後4時、那覇市久茂地2-2-2のタイムスビル、入場無料でやっています!

 大人気マジシャン「MASA MAGIC」さんや県内ゆるキャラがやってくる!

 ビビデバビデブーの演奏に聞きほれ、縄跳びパフォーマンスに見入って、段ボール迷路で迷って、釣り堀で爆釣してください!

 「おばあタイムス」大城さとし先生、「うちなー芸能探偵ダン☆」ittetsu先生の漫画教室ももちろん開かれます!

 夏休みの自由研究におすすめの新聞スクラップ教室ももあります!

 多彩な催しを遊びつくす夏にしてね!会場ではワラビーが待っています!

今年も「ビビデバビデブー」が出演します!

 

 さらにさらに、8月5日(土)、6日(日)の2日間は沖縄市与儀3-11-1、県立総合教育センターで「ワラビーまつり&青少年のための科学の祭典」が開かれます!

 5日は13~17時、6日は10~17時、こちらも入場無料です!

 15以上の実験ブースが設置され、身近な「ふしぎ」の秘密を探れます!

 大人気の「サイエンスマジックショー」ももちろん開催します!

Mr.カガックのサイエンスマジック。この後、白い風船の中の黄色い風船だけが消える

 

 夏の恒例、2つの「ワラビーまつり」、多くの来場をお待ちしています!

「まってるよ!」


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