ワークとライフのバランスをとれよワラビー


レンタルオフィス・コワーキングスペース howlive(ハウリブ)編

 長い「冬眠」から3年3カ月ぶりに目覚めた沖縄タイムスの広報担当社員・ワラビー。自身が所属する総務局がある12階フロアをぶらぶら歩いて気づいた。

「ワラビーが眠る前より、社内がどこかしら、さっぱりしたような気がします・・・」

 ―そう、沖縄タイムス社と関連会社は2020年12月までにフリーアドレス化を実現した。フリーアドレスとは社員の固定の席をなくし、その日の気分や業務によって好きな席で仕事ができるしくみ。局間、部署間、関連会社間の壁を取り払うことで人の交流を活発化させ、グループ一体となって連携強化を目指す目的がある。

 固定席を持たない社員の私物は鍵付きロッカーへ。タイムスグループの社員はタイムスビルの10階から12階まで、どの会議室、どの共用スペースを使っても自由だ。

 記者が多く集う11階には「集中ブース」や「電話ブース」も設置。会議室の使用予約などはグループ社員がウェブ上でカレンダーを共有することで管理されている。

ラーメン店「一蘭」をも想像させる集中ブース

 ―というような説明を総務局次長の濱元克年から受けたワラビーはうなずいた。

 「―なるほど、みんな住しょ不定なんですね!」

 「いや言い方!」 あきれる濱元。「そうだワラビー。仕事復帰へのリハビリにちょうどいい。2階の『ハウリブ』に行って、フリーアドレスを含めた最新の働き方を学んでおいで」

 「よく分からないけど、分かりました!」 元気よく敬礼する有袋類。

 「なんだその矛盾した発言は・・・」

 

 そうしてワラビーはタイムスビル2階を訪れた。

 「ワラビーが眠る前、2階は『ふるさと元気応えん企画』や、写しん展、生け花展、工芸展などがいっぱい開かれていた、イベントのための場所でした・・・」

 ワラビーの進行方向、1階エントランスからのエスカレーターを上った地点に、受付が現れた。
 「ワラビーだ!」有袋類にスマホを向け、写真をカシャカシャ撮り始めたのはハウリブスタッフの鶴岡佳奈さん。「ようこそハウリブタイムス店へ!」

 「ハウリブ?・・・リブといえばスペアリブ・・・分かった、正かいは、ソーキの仲間です!」 毎度おなじみ、食欲で知恵を回転させる有袋類。

 

 「それは何のクイズだいワラビー」 そこで金髪、Tシャツにジーンズ、スニーカーの男性から声をかけられた。「七・三分けにスーツ、革靴」というオールドスタイルのサラリーマンの対極にあるようなファッションに身を包んでいる。

 「ハッ!あなたはだれ?MASAマジックのお兄さん?」 何でだよ。

 「違うよワラビー」男性は苦笑いする。「僕は金子智一レンタルオフィス・コワーキングスペース『howlive(ハウリブ)』を運営する『マッシグラ沖縄タイムス』社の社長なんだ。タイムスのフリーアドレス化も手がけたよ」

 「社長さんですか!」驚く有袋類。

 

 金子社長や鶴岡さん、さらにスタッフの石渡友美さんに導かれ、ハウリブに足を踏み入れたワラビーは目を輝かせた。「わあー、すてきなホテルか、図書かんみたいです!」

 ハウリブタイムスビル店は2018年12月に開業した。複数の企業が座席やインターネット、電気、コピー機、会議室などオフィスの設備を共同で使用するコワーキングスペースで、県内でも先駆け的な存在だ。

(howlive提供)

 タイムスビル店は店内に専用個室が持てるプランやコワーキングスペースが使えるデスクプラン、法人登記ができて郵便物が受け取れるバーチャルオフィスプランなどさまざまなプランを取りそろえている。オフィス街や県庁、那覇市役所にも近い那覇市久茂地に「自社」や「支店」を持てるメリットは大きそうだ。加えて契約なし、予約不要で1時間単位で利用できるドロップインプランもある。

(howlive提供)

 さらに、ハウリブは読谷村や名護市、宮古島などにも店舗を持つ。リゾート地で働き、仕事以外の時間はリラックスして過ごす、仕事とバケーションを組み合わせた「ワーケーション」の需要にも応えられる。

(宮古島店・howlive提供)

 ハウリブを利用することで、通常オフィスを構えるのに必要な敷金や礼金などの初期費用や、毎月の水道光熱費や通信費が発生しないメリットがある。さらに、共有スペースで入居企業の社員が異業種交流することでビジネスのチャンスが生まれたり、視野が広がったりすることも期待されるという。

 

 「めずらしいものが、いっぱいです!」興味深そうに眺める有袋類。棚には味がある雑貨類がディスプレイされている。

 鶴岡さんが教えてくれた。「県外や海外からゲストが訪れた時でも、失礼のないようなしつらえにしようと選ばれた物なのよワラビー」

 本棚には疲れた頭をほぐしてくれそうな人文書や小説も並べられていた。

 

 さて、オープンスペースからデスク席スペースに入ってきたワラビー。

 石渡さんがいすをすすめてくれた。「ワラビー、このいすがオフィスチェアの名作『ハーマンミラー・セイルチェア』だよ。座ってみて」

 「ホウ・・・ゆったりとしながらも、せなかがのびる感じもあります!いい感じで集中できそうです!」 集中力のない顔で感想を語る有袋類。

 「疲れにくい健康的な姿勢を保てるよう、人間工学に基づいて設計されてるの」

 「ワラビーがすわってもつかれない?ワラビー工学にももとづいてる?」

 「それは・・・えっと・・・お値段はなんと10万円よ!」

 「10まん!すごいです!」 うまく誤魔化されたワラビー。

 

 さらにパソコンに向かってみた。「ワラビーも仕ごとがはかどるかも!とりあえず、はまもと次長に、おこづかいを上げてもらうようメールしよう・・・」 それは仕事ではない。

 カタカタカタ。だが、ワラビーのふかふかな手は、狙ったキーボードをうまく打つことができなかった。

 「ハッ!そういえばワラビーは、とんがりコーンを使ってしかキーが打てなかった・・・!」 

 「・・・ワラビーとパソコンは犬とサルの関けいにちがいない・・・」 斜陽感がひどいな

 「まあまあワラビー」「いろんな仕事があるし」 石渡さんと鶴岡さんに励まされた。

 

 ほかにも、さまざまな設備を備えるハウリブ。

 「ここは電話をしたり、テレビ会議のための小さな個室なのよワラビー」通称「テレカンボックス」。石渡さんが「使用例」を示してくれた。

 「ちょっとした、ひみつきち感もあります!」

 案の定、入ろうとしたワラビーだが、頭が使えて入れない。「いたいいたい、ワラビー工学に、もとづいてません!」 流行りかよ「ワラビー工学」

 (たぶん普通のワラビーなら入るんだけど・・・)苦笑いする石渡さん。

 

 そこで、入居企業の社員の方がワラビーに気づき、写真を撮りに来てくれた。

   名護市にあり、ITシステムの運用保守などを手がけるイグニション・ポイント オペレーションズの坪内さんと稲葉さんだ。

 「ハウリブの使いごこちは、どうですか・・・?」

 「私たちはスマホアプリなどの保守をしているんだけど、那覇でオフィスを探していたの」

 「スペースも広いし、24時間使えることは、ずっと稼働してなくちゃいけない保守の仕事にとって重要なのよワラビー」 ハウリブのオフィスは24時間利用可能なのだ。

 「よかったです!」

 

 最後に、金子社長にも話を聞いたワラビー。

 「金子社長、ハウリブは、いろんな会社の人が、いろんな日にちや時間たいに働ける場しょということが分かりました!」

 「そうだね。最近はスマホやワイファイが普及して、席や場所に縛られずに働けるようになった。新型コロナウイルスの影響で、会社以外でテレワーク、リモートワークできる拠点としてもこうしたシェアオフィスは注目されているよ」

 「リモートワーク?

 「離れた場所で働くことだよ。コロナでワーケーションへの理解も広がっている。大都市と比べてストレスを感じることが少ない沖縄で、インターネットを使った新しい働き方を提案したかったんだ」

 「ワラビーが住んでいるなはも大とかいだけど、たしかに、ストレスは少ないです!」

 「そんな顔してる。どこに住んで、どう働くかは、その人の『生き方』そのものと結びついている。『ハウリブ』とはどう生きるか。私たちハウリブは働く場所を提供しているんだけど、利用者には使ってもらいながら、どう生活、余暇を充実させるか、生き方を考えてほしいんだ」金子社長は、そう提案した。

 「なるほどー!働きかたは、生きかたなんですね!」感心する有袋類。

 「ちなみに、僕の座右の銘は『何事にもマッシグラ!』。だから会社名も『マッシグラ沖縄タイムス』なんだよ」小さなホワイトボードを用意して社名を書いた金子社長。

 「かっこいいです!ワラビーも『マッシグラ』と書きたい・・・」ペンを借りた有袋類。

 「・・・どうですか?」

 「ワラビー、それじゃ『マッツグラ』だよ!ありがちなミス!」

 「しまった!もう一回書きます」ふたたび『マッシグラ』に挑戦。

 「・・・どうですか?」

 「いや、今度は『アッツグラ』になってる!何でさっき書けてた『マ』まで書けなくなったの!?」

 「・・・えー!」

 

 ―さらに。

 石渡さんがホワイトボードでワラビーに指示を出す。

 「・・・分かりました!」

 共用の複合機でコピーをこなす有袋類。ちなみにこのスペースには、利用者が使える鍵付きロッカーも備えられている。

 さらに、石渡さんからの指示が―。

 「分かりました!」

 「―はい、新ぶんです!」いそいそと新聞を用意し、石渡さんに手渡す有袋類。

 「ところでワラビー、私も決して時間に余裕があるわけじゃないんだけど・・・いったい何をやらされているの?」けげんな顔をする石渡さん。

 「はなれた場しょではたらく・・・リモートワークです!」 それはただの筆談だ

 「もう、分かったよ、ワラビー」石渡さんはため息をつき、入り口に向かった。

 そして、ワラビーにホワイトボードを掲げた。

 ―ワラビー、もう帰って―

 「・・・ええー!」

 

 パソコンもスマホも使えないワラビーは、リモートワークには向いていないのかも。ただ、共有スペースにいるだけで人と人とのコミュニケーションをつなぐ存在かもしれない。そんなことを思ったワラビーブログスタッフだった―。

 「ハウリブのみなさん、入居企業のみなさん、ありがとうございました!」

ノリが良すぎる金子社長らマッシグラ勢

 

  おまけ・2人がかりでゲストパスをつけられる有袋類。

 

捕獲され感


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