那覇とかけて文化芸術と解くんだワラビー


那覇文化芸術劇場なはーと 編

 10月某日、秋晴れの昼下がり。沖縄タイムスのマスコットキャラクターで「久茂地の有袋(ゆうたい)類」ことワラビーは、好天に誘われるようにタイムスビルのご近所をぶらぶら散歩していた。

 「♪ララッラ~ランドセルは~♪」「天使のはね」的な鼻歌も飛び出し、ごきげんのようだ。「♪ルルッル~ルーペを尻ふみ~♪」 ハズキかよ

 やがて、織物にくるりとラッピングされたような、特徴的な建造物の前までやってきた。「ハッ!この前までずっと、工事していた場しょです!ワラビーがすむ大とかい・なはに新しい建物が、できました!」

 建物名を読む有袋類。「なは、文化、芸じゅつ、劇じょう、なはーと・・・劇じょうですか!」

 

 そう、ワラビーがやって来たのは2021年10月31日、那覇市が久茂地小学校跡地に開館する「那覇文化芸術劇場なはーと」。約1600席の大劇場や約260席の小劇場、大小のスタジオなどがあり、演劇やミュージカル、伝統芸能、音楽コンサートなど舞台芸術の新たな発信拠点になる施設なのだ。

織物に包まれたような外観の「なはーと」(模型)

 「ごごの予定もないので、探けんしよう・・・こんにちは、ワラビーだよ!」 言い訳がましく建物の中に入ると―。

 「わあー、建物の中にいるのに、外にいるみたいです!」 歓声をあげたワラビー。

 1階共用ロビーは「なはーと」が面している複数の通りから入れて、通り抜けもできるようになっている。沖縄特有の花ブロックを組み合わせた大きな壁が目を引く。

 「いろんながらがある!こんなにならぶと花ブロックの花ばたけです!」喜ぶ有袋類。

 頭上にはスタジオや練習室がせり出している。そして見上げれば、ランダムに配置された照明が星空のようだ。

 「こんにちはワラビー。いらっしゃい」

 「ハッ!あなたはだれ?迷子のサラリーマン?」 何でだよ

 「違うよ。僕は那覇市文化振興課仲尾次弘です。せっかくなので、なはーとを案内しようか」

 「ホント?よろしくおねがいします!」

 「こちらこそよろしく」

 「仲おじさん、ワラビーはこのロビーを、外みたいに感じました!」」

 ロビーはいろんな直線や曲線、色が立体的に合わさり、見る方向で印象が変わるので、街歩きをしているような気分になれるのだ。

街歩き気分の有袋類

 「そうだね。通りがつながり、沖縄のどこかにあるようなスージグヮー(路地)を歩いているイメージです。時間帯によって入り込む光の表情の変化も楽しめるよ。劇場に用がなくても、ワラビーのように自由に入ってきて、それぞれ何かを発見してほしいな」

 「くもじ散ぽが楽しくなりそうです!」

 「さあ、それでは大劇場に行きましょう」 仲尾次さんが先に立って歩き出した。

 

 大劇場入り口に続くホワイエ(広間)はまるで洞窟のような開口部がある。

 チケットをもぎる場所に立った有袋類。「ワラっしゃい!劇団ワラビーの公演『101匹ワラちゃん』はこちら!ワラビーがワラワラでワラっちゃうよ!」「ワラ」大渋滞か

 また、知っているとちょっとうれしい情報として、入り口前の床のカーペットにはサンゴの産卵がデザインされている。「しんぴ的です!」

 卵と精子が詰まった赤いカプセル「バンドル」とともに観客がいざなわれる先は―。

 ―深い深い、海の中だ

 「わあー!」 大劇場の壮観さに、歓声を上げるワラビー。

 仲尾次さんが口を開いた。那覇市は設計を依頼した際に『一目見ただけでどこの劇場か分かるものをつくってほしい』と要望したんだよ」

 そうして完成したのは地上のどこにもない、「海の中」を表現した大劇場。「海面」に近づくにつれ、座席や壁の色が淡くなるように作られているのだ。

 「たしかに、きれいな劇じょうです!」ワラビーもうなずいた。

 天井はまるで、日の光を浴びた水面(みなも)がゆらめいているようだ。

 ワラビーも舞台に立たせてもらった。「竜ぐう城があれば、きっとこんな感じのステージがあるにちがいない…ワラビーもタイやヒラメと、まいおどります!」 「101匹ワラちゃん」はどうした。

 ワラビーが訪れた日はちょうど、ステージ上の「音」を観客席に反射させて音量と響きを増やす「音響反射板」を調整中。

 ステージの「開口部」の高さは12メートルあり、さらにステージ上方には高さ20メートル以上の「大空間」が広がっていた。建物の外観からはなかなか想像できない、不思議な光景だ。

 

 最新の舞台技術を導入していることも、なはーとの自慢の一つ。特別に、劇場の音響を操る調整室にも入れてもらった。

 音響技術を担当している福澤裕之さんが相手をしてくれた。「どの席でも同じ音質と音圧で音が届くように、1年かけてスピーカーの構成や角度を調整してきたよ。きれいな音に仕上がっているので、市民にも活用してほしいな」と呼び掛けた。

 舞台スタッフが互いに情報を伝達するワイヤレスインターカムも24チャンネルの利用が可能。公演を安全、円滑に進めるために十分な「連絡網」を構築したという。

 「ワラビーも1チャンネルくらいまかされたい…」

 「どんな指示を出すのかな」

 「正かくな、はら時計で、タイムキーパーをします!」 食後は無力だな

 

 一方、首里城をモチーフにした小劇場は赤と黒のシックな内装だ。

 入り口から座席へのアプローチも間接照明の光がもれ、幻想的な雰囲気をかもし出している。

 仲尾次さんが説明した。「座席は王族の高貴な着物をイメージした黄色だよ」

 そう聞いて、さっそく座席に腰掛ける有袋類。「王ぞく!…なるほど、黄色はワラビーの色にも近いです!」 ベージュのくせに何を

 

 3階にある大スタジオは、大劇場の主舞台と同じ広さを持つため、公演のけいこに使える。けいこ期間も大劇場を確保しておく必要がないため、大劇場の効率的な使用が可能になるという。

「ひろびろと、しています!」

 各種サークルなど市民の文化活動の場としても使いやすそうな練習室も4カ所確保されている。

 看板はカーブしていて、いろんな方向から見やすくなっている仕様だ。

 ワラビーが入ったのは練習室4。ここからは運行するゆいレールも見ることができる。

 「日あたり、良好です!」 にわかに「マンションを内見しに来た人」化した有袋類。

 

 屋外に出て、特徴的な「布」の外観も観察した。伝統の織物「首里織」をコンクリートで再現したものだという。

 よく見ると「縦糸」と「横糸」で「織られて」いるのが分かる。

 「ふんわりした見た目もふくめて、こまかい、おしごとです!」ワラビーが感嘆した。

 周辺には織物にちなみ、染色に使えるフクギやクチナシなどが植えられた。建物とともに成長していくのが楽しみだ。

 

 館内の至る所に交差する通路や階段があり、ガラス越しに各部屋や空間の「にぎわい」も感じられる。

 「場しょ、場しょでいろんな顔があって、まよってみるのも楽しい、なはーとだよ!」

 

 再び、1階ロビーに戻ってきた有袋類。

 そこで興味をひかれたのはー。

 「デラックスなピアノ…デラックスピアノがあります!」 「グランドピアノ」ね。

トランペットに憧れる少年

 なはーとに導入されたのは、世界のトッププロ向けに製造されているコンサート用グランドピアノ、ヤマハの「CFX」。お値段なんと約2000万円(!)。この日はお披露目に向け、音を整えているところだった。

 「ホウ…美しい曲線です!『ワラビーハンガー音楽たい』ともコラボしたい、いつ材です!」 「羊と鋼の森」にウットリした視線を向ける有袋類。

 「どんなきれいな音をかなでるのか…」 ワラビーが鍵盤に手を置こうとするとー。

 「ワラビーそれはダメ!」 さすがに仲尾次さんに止められた。

 「仲おじさん、すぐれたピアノは、ひき手をさそいます!」 偉そうに

 「そして優れたピアノは弾き手を選ぶよワラビー。いつか弾けるように精進してね」

 「…ええー!」 ウットリからガッカリに移行する有袋類。それはさておき、CFXが劇場でどんな堂々とした音を響かせるのか、今から楽しみである。

 

 最後に、なはーとへの思いを語ってくれた仲尾次さん。「生で対面しないと感じ取れないものがある。公演を楽しく見て、その世界に入り込めたり、心に残ったりする、感動を共有できる場所にしたいですね」

 「すてき!仲おじさん、きょうはありがとう!」 お礼を言って、ワラビーが気づいた。

「『なはーと』には大とかい・なはの『なは』と、『はーと』が入っています。『はーと』は心です!」

 「正解だよワラビー。『なはーと』は『那覇(ナハ)』と「心(ハート)」と「芸術(アート)」から名付けられたんだ」と、うなずく仲尾次さん。

 仲尾次さんによると、従来の劇場のターゲットは「わざわざ見に来てくれる人」だったが、「なはーと」は日中の人口が多い市街地にあるため、仕事帰りやちょっとした空き時間に訪れる人など、ターゲットの幅が広がる可能性があるという。「公演後に近くの飲食店で食事しながら、家族で感想を言い合ってもいいですよね」と提案した。

 「なはーとを中心に、大とかい・なはの楽しみがふえそうです!なは市のみなさん、がんばって!」 ワラビーもワクワクを感じたようだ。

 

 仲尾次さんと別れた後、大劇場に戻ってきたワラビー。

 「いろいろ歩き回って、つかれました!ゆったりした座せきで、すこし休んでいこう・・・」

 そこで、きょろきょろし始めた有袋類。

 「ワラビーは明るいとねむれない・・・と思ったら、いいかんじの布があります!」

  ※当然ですが、劇場は仮眠する場所ではありません

 「これをかぶって、ねむります!」

 頭から「いいかんじの布」をかぶり、やがて寝息を立て始めた有袋類。「ZZZZZZ,ZZZZZZ・・・」

 その姿は―。

 大劇場の座席に浮かぶハートマークのようであった

 「・・・ワラビーがなはーとの『なはーと』になった!」 広報担当職員の山上順子さんが目ざとくツッコミを入れたのである―。

 

 那覇とかけて文化芸術と解く・・・そのはもちろん「なはーと」。

 那覇市久茂地の新たなランドマークとして、市民でにぎわう日も近い―。

 

 ~ワラビーからお知らせ~

 那覇文化芸術劇場「なはーと」は10月31日の開館後、「こけら落としシリーズ」としてさまざまな祝祭的な演目の上演を控えています。

 12月4日 地域芸能文化公演「TSUNAGU Ⅴ」

 12月12日 狂言の野村萬歳氏による「三番叟(さんばそう)」と、野村萬斎×嘉数道彦の共同構成「唐人相撲(とうじんずもう)〜なはーと編〜」の上演

 2022年1月4日~1月12日 2021国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ「りっかりっか*フェスタ2021」

 ―ほかにもバレエや音楽コンサートなどの公演が目白押し!詳しくは「なはーと」ホームページで確認してくださいね!

「お客さんは、まだですか・・・」

 職員のみなさま、ワラビーにお付き合いありがとうございました!末永く愛される文化芸術の拠点になるよう祈っています!


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